非天マザー by B-CHAN

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1万円貸して、あとで1万円返ってきて、損しなくて済んだ?ホント?

時間価値

5月31日に、ファイナンスに関するエントリーを書いてみました。


無借金経営って良いこと?(ファイナンスの基本)


ボク自身の知識のおさらいとして、今後もたまに書いてみたいと思います。
しかも、一般の人にわかるように出来るだけ簡単に。
簡単にするため、厳密には違うよ、って思う人もいるかもしれませんが、そこは細かいことは気にしない。
さて、今日は、
現在価値
という話をしてみますか。
あなたが友達に頼まれて6月1日に1万円を貸したとします。
無事に返ってくるかなー、と心配しつつ1年が経過し、翌年の6月1日に、その友達から1万円が返ってきました。
あなたは胸をなで下ろし、
ふー、損しなくて良かった。
と一安心。
しかし、この話。実はおかしいのです。
実は、金銭に関しては、現在の価値と将来の価値とは異なるからです。
例えば、もしあなたがその1万円を友達に貸さずに銀行に預けたとします。
昨今は景気が悪く、低金利が続いているので、銀行の金利もずいぶん低いですが、
ここでは仮に、銀行預金の年利を3%と仮定します。
すると、1万円を1年間預けることによって300円の金利が得られます。
話を簡単にするために税金は無視しますね。
あなたは本来なら、1万円を1年後には1万300円に増やすことができたわけです。
このとき、この3%を「期待利回り」と言います。
1万円を適正に運用すれば、1年後には1万円が1万300円になるわけです。
つまり、現在の1万円と1年後の1万300円とは価値が同じと言うことです。
逆の言い方をすれば、1年後の1万300円は現在の価値で言えば1万円なわけです。
この将来の金額を現在の金額で表したものを、
現在価値
と言います。
1年後の1万300円の現在価値は1万円ですね。
計算式は簡単で、
現在価値=将来の価値÷(1+期待利回り)
です。
1万円=1万300円÷(100%+3%)
ですよね。
さて、上記の友達から返ってきた1万円に戻りましょう。
1年後に1万円が返ってきましたが、これを現在価値に換算すると、
現在価値=1万円÷(100%+3%)
答えは、9709円です。
あなたは、1万円を貸して1年後に1万円を返してもらいましたが、その返ってきた1万円を現在価値に換算すると9709円しかありません。
つまり、実は、当初の価値で見れば1万円を貸して9709円を返してもらったことになり、291円ほど損したことになります。
もし1円も損したくなければ、少なくとも1年後には1万300円を返してもらう必要があります。
1万円貸して1万円返してもらったから損しなかった、ということにはならないわけです。
企業ファイナンスやプロジェクトファイナンスの世界では、この考え方が事業戦略の基本になっています。
100億円で工場を建設して、将来120億円の収益を生み出したからと言って、20億円儲かったということにはならないわけです。
将来の120億円を現在価値に割り戻したときに100億円を下回っていれば、その投資は失敗、つまり損したということになります。
このように、見た目の数字だけではなく時間の概念を取り入れて投資戦略を決定しないと、企業経営は成り立ちません。