非天マザー by B-CHAN

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資産の話(すべての人が知っておくべき会計リテラシーをサルでもわかるように書くシリーズ)

資産はストック


以前、収入のお話をしました。
かならず読んでみてください。


収入とか資産とかという言葉(今回は収入の話、資産の話は次回書きます)


こういう話は一般的には会計学と言います。
ボクはなぜ日本の義務教育に会計学を入れないのかが解せないんですよね。
少なくとも資本主義社会で生きるすべての人に関係あることなんですよ、会計って。
例えば、物理や歴史などは、その方面の分野に進まない人にはあまり関係がある学問では無くなってしまいます。
でも、どんな人でも買い物はしますし、貯蓄のことやローンのことなどには関わりますよね。
働いたら収入を得ますし、消費したら支出が発生します。
生きているすべての人がもっとも密接に関係し、しかも知識のない人ほど大損をするリスクのある学問、それが会計学です。
事業はうまくいっているのに会計の知識がないために会社が倒産して首を吊っている人がたくさんいます。
黒字でも倒産することはあるんです。
でも会計やファイナンスの知識がないために、なぜ黒字なのに倒産するのかが理解できず、その結果、命まで失っているわけです。
住宅ローンの本質を知らずに契約して、金利の上昇で予想以上に返済額が増えて返済できなくなり、家を失う人々もいます。
だから、ボクがこのブログで書いている程度の初歩の会計学程度は義務教育で全員に教えておくべきだと思うんですよね。
そうすれば、おカネの使い方の大切さや、稼ぐということの大変さも身に染みてわかるようになると思います。
専門家になる必要はありませんが、国語、数学、理科、社会、英語と同等かそれ以上に必須かつ重要な科目だと思います。


さて、冒頭で書いた収入の話というのは、会計的に言えば、損益計算というカテゴリになります。
まったく知識のない人は、「借金」とか「赤字」とかを同じようにマイナスな物としてごちゃまぜに考えている人がいますが、大きな間違いです。
借金については、以前書いた、この記事も読んでください。今でも毎日のようにアクセスがある、このブログでもトップランクの人気記事です。それだけたくさんの人が知りたがっているということです。


無借金経営って良いこと?(ファイナンスの基本)


たくさんの人が学んでいることを、あなたが知らなければ、それはどういうことを意味するかわかりますか?
例えば10人の中であなただけが知らないとすれば、とても悪い言葉を使いますが、わかり易く言うと落ちこぼれです。
もちろん落ちこぼれであること自体は気持ちの問題なので別に構いませんが、少なくともみんなが知っていることを自分だけ知らないというのはとても損をする可能性があります。
みんながモノを安く買えたのに、あなただけが知識がなくて同じものを高く買ってしまうようなものです。
小さな金額なら問題ありませんが、例えばみんながローンの金利を1000万円支払っているのに、あなただけが1800万円も支払っているとしたら、生活の根幹に関わる問題です。
逆にみんなが知らなくて、自分一人だけが知っているのであれば、それは優秀なことですし、なんら損することはありません。
みんなに教えてあげることによって、人の役に立つことも出来ます。知識のない人は、自分も損ですし、人の役にも立てません。
ですから、できるだけみんなに知っておいてほしいことなのです。
自分はメーカーの工場で働く人間だから関係ないとか、自分はWebデザイナーだから関係ないとか、そんなことは全くありません。
すべての人に密接に関わる話です。
知識のない人はこれからも間違った判断をしてしまう(つまり損をする)、そして知識のある人は正しい判断ができる(つまり損をしなくて済む)ということになります。


では再び冒頭に書いた収入の話をさらっとおさらいします。収入というのは損益計算のカテゴリということをさっき書きました。
損益計算というのは、「一定期間」の収支のことを言います。この「一定期間」というのが重要です。
例えば、通常、企業の損益計算は1年間という「期間」で判断します。
1年の間に、収入が1億円あり、支出が8000万円あったとしたら、その企業は、その期に、2000万円の利益を得たことになります。
逆に1年の間に、収入が1億円あり、支出が1億3000万円だったとしたら、その企業は、その期は、3000万円の「赤字」ということになります。
これは1年間という期間を定めたから計算できることですよね。
収入とか支出とか利益と言った損益計算は一定の期間を定めて計算するということを覚えておいてください。
まあ、簿記の知識以上を持っている人なら当たり前すぎる話です。
では次に「資産」の話をします。
資産というのは主に、貯金と借金(負債と言います)で成り立っています。
ちょっと考えてみてください。
例えばボクが100億円の貯金を持っているとしたら、どう思いますか?
「金持ちだなー」
と思うでしょう。
でも、その100億円は実は銀行から借りてきたもので、それが貯金口座に入っているのだとしたらいかがでしょうか?
つまり、貯金は確かに100億円あるが、実はそれは全部借金でもあるということです。
もっと小さな話をすれば、例えばボクがAさんから1万円を借りて、それを自分の貯金口座に入れたら、貯金は確かに1万円増えますが、Aさんに1万円返す必要がありますから、借金も1万円ということになります。
結局、差し引きすれば、ボクの財産はまったく増えていないわけです。当たり前ですよね。
だから、100億円の貯金も、その出どころが銀行からの借入ならば、実は金持ちでもなんでもなく、財産はゼロなんですよね。
貯金が100億円でも借金も100億円なら、財産はゼロ。わかりますよね。
企業会計において、この関係を表す表のことを「貸借対照表(バランスシート)」と言います。
少なくとも上場企業にはすべてバランスシートを公開することが義務付けられていますから、インターネットなどで簡単に見ることができます。貯金から借金(負債)を引いた真の財産の事を「純資産」と呼びます。
100億円の貯金があり100億円の負債がある人は、当然、純資産はゼロです。
貯金というのは、必ずどこからか出どころがありますよね。
例えば、貯金ゼロだった人が1ヶ月働いて手取りで給料を30万円もらい、それを全部貯金したとします。つまり貯金が30万円になったわけです。
30万円の出どころは、もちろん給料ですよね。この場合は、この30万円は返す必要はない、つまり借金ではありませんから、この人の純資産が30万円になったわけです。
さっきの100億円の例であれば、100億円の貯金の出どころは銀行であり、それは返す必要がありますから、純資産はゼロというわけです。
このように、貯金にはかならず出どころがあり、その出どころに対して返済する必要が有るか無いかで純資産が変わってくるわけです。
だから、貯金の額だけを聞いて、金持ちかどうかを判断するのは当然間違いなわけですが、こういう知識が無い人は、100億円の貯金と聞いただけで、金持ちだと思ってしまう、つまり、間違った知識によって間違った判断をしてしまうわけです。
さらに言えば、例えば500億円もの貯金がある人が、800億円の負債を抱えているのであれば、もはや純資産がマイナスなわけで、そういうのを「債務超過」つまり、全財産を渡しても、まだ借金が返せない状態になっているということです。
500億円の貯金があるから金持ち、なんて大間違いですよね。
貯金額なんていかにアテにならないかがよくわかると思います。正確な財産を知るためには、貸借対照表(バランスシート)をきちんと見る必要があります。
ちなみに日本を代表する企業であるトヨタ自動車には10兆円を超える巨大な負債があります。おそらく負債の規模としても日本最大級でしょう。
これも、知識のない人であれば、負債がそんなに大きくて大丈夫だろうかと心配してしまうでしょうが、トヨタのバランスシートを見れば、問題ないことがわかります。もちろんそれは、負債額よりもはるかに大きな「貯金」があるからです。
企業の場合は個人とは違って、貯金がすべて「おカネ」というわけではありませんが、ここでは話を簡単にするために「貯金」という言葉を使います。いずれにせよ、負債が10兆円あっても、たとえば貯金が20兆円とか30兆円とかあれば良いわけですよね。
ところで、資産や負債の話をする前に収支計算の話のところで「一定期間」の話をしましたよね。
でも、貯金や借金には期間の概念はありません。なぜなら、貯金や借金はある時点での残高を表すものだからです。
一定期間の間には貯金の額も借金の額も変化していきますから、そもそも定まりません。
ですので、貯金や借金は「期間」ではなく「時点」で測定します。
「長さ」ではなく、「点」です。
例えば、
「1月末時点では負債は50億円だった。」
「3月末時点では貯金は140億円ある。」
というような言い方です。1月末とか3月末という「時点」が登場します。
「赤字」という言葉と「借金」という言葉、どちらもマイナスイメージのある言葉ですが、実は全然違うわけです。
「赤字」はあくまでも一定期間の収入と支出の差がマイナスになった結果であり、「借金」は一時点での借り入れの残高を表す言葉です。
ですので赤字と借金は関係の無い言葉です。
借金がある企業でも黒字になったり赤字になったりしますし、借金が無い企業でも黒字になったり赤字になったりします。
例としては、
「1月1日から12月31日までの1年間で収入は50億円、支出は30億円だったので、利益は20億円。いっぽう当社の負債は12月31日時点で20億円あります。」
とか、
「1月1日から12月31日までの1年間で収入は20億円、支出は30億円だったので、赤字は10億円。なお当社には負債はありません。」
というようなことです。
赤字という言葉と借金という言葉はまったく別の概念で何の関係もない言葉ですよね。ゴチャ混ぜにしないでくださいね。


ところで、この一定期間の収支つまり損益計算と資産との間には密接な関係があります。


例として、1月1日時点で貯金が100億円負債が70億円(つまり純資産が30億円)の企業があるとします。
ぜひ手元のメモ用紙に数字や日付を写しながら読んでください。そのほうがわかりやすいです。
この企業が1年間活動したとします。1月1日から12月31日までの間に収入が50億円、支出が45億円だったとします。つまり1年間活動して、利益が5億円出ました。
この利益は何を表しているでしょうか。
実はこれは貯金の増加を表しています。
収入が50億円で支出が45億円というのをわかりやすく言えば、45億円で仕入れた品物が50億円で売れたということですね。だから5億円儲かったわけです。
さてこの企業、さっきも書いたように、1月1日の時点では貯金が100億円でしたよね。そして1年経って5億円儲かったので、貯金は合計105億円になりました。
こう書けばわかりやすいでしょうか。


  • 1月1日時点・・・貯金100億円、負債70億円(つまり純資産30億円)




この期間・・・収入が50億円、支出が45億円(つまり黒字=利益5億円)


  • 12月31日時点・・・貯金105億円、負債70億円(つまり純資産35億円)



損益計算として5億円の利益を生み出したため、その5億円がその企業の純資産として上積みされた、ということですね。
ここでは借金は特に返済していませんので、負債額はそのままです。


こんどは二つ目の例として、1月1日時点で貯金が100億円負債が70億円(つまり純資産が30億円)の企業があるとします。ここは同じですね。
この企業が1年間活動したとします。1月1日から12月31日までの間に収入が45億円、支出が50億円だったとします。つまり1年間活動して、赤字が5億円出ました。
収入が45億円で支出が50億円というのをわかりやすく言えば、50億円で仕入れた品物が45億円でしか売れなかったということですね。だから5億円損したわけです。
5億円損したわけですから、その分貯金が減りました。
同じように書いてみましょう。


  • 1月1日時点・・・貯金100億円、負債70億円(つまり純資産30億円)




この期間・・・収入が45億円、支出が50億円(つまり赤字=損失5億円)


  • 12月31日時点・・・貯金95億円、負債70億円(つまり純資産25億円)



損益計算として5億円の損失を生み出したため、その5億円がその企業の純資産から減った、ということですね。
ここでは借金は特に返済していませんので、負債額はそのままです。


この2つの例でわかるのは、とにかく「借金」と「赤字」とは関係が無いということ。
そして、損益計算つまり一定期間の活動の結果が、資産つまりある時点での財産の大きさに反映されることです。
この仕組みはあらゆる企業活動の大原則であり、そして実は個人の家計でもまったく同じ事が言えます。
収入は給料、支出は食費や光熱費などに置き換えればわかりますよね。
貯金の大きさや借金の大きさだけを見て財産を知ることはできないということがわかってもらえたでしょうか。
そして、ここまで読んでもらえれば、もう一つわかることがあります。
それは、
赤字は倒産の理由ではない
ということです。
倒産というのは、ものすごく簡単に言えば、負債が返済できないことを言います。
つまり、負債のない企業は、どんなに赤字を出し続けても倒産しませんし、負債のある企業でも純資産がある限り倒産しません。
例えばさっきの2つ目の例では5億円の赤字が出ましたが、それでもまだ12月31日時点では95億円の貯金に対して負債が70億円ですから返済できます。毎年5億円ずつの赤字を出しても、5年間は大丈夫という計算になりますよね。
このことからも赤字と借金とはまったく別のものだということがわかります。
会計知識がある人がこの文章を読めばもちろんそんな簡単な話では無いと指摘されるでしょう。
例えば厳密に言えば純資産がある限り倒産しないということは無くて返済のタイミング(つまり資金繰り)によって左右されるんですが、あくまでもここでは、話を簡単にするためにこういった書き方をしたということをご理解下さい。
資金繰りという概念が入ってくるとワンランク難しい話になりますので、ここではやめておいて、いずれ将来、書いてみたいと思います。
それがわかるようになると、なぜ黒字でも倒産するのかが理解できるようになります。