非天マザー by B-CHAN

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所有権と名義とiTunes楽曲の再ダウンロードのお話

実際のモノを所有する以外の所有権

買ったものには所有権があります。
昔は多くの場合、所有権とモノが1対1で紐付いていました。
例えば、書店で本を買えば、本というモノを手に入れ、そしてそれは、その本のモノの所有権を手に入れたことに他なりません。
所有権とモノが1対1で紐付いているということは、そのモノを無くせば、その所有権を失うと言うことです。
だから本を無くしたからと言って書店に行って、
「無くしたからもう1冊くれ」
と言っても、もちろんもらえません。
別にもう1冊買う必要がありますし、でもそれは別のモノであって別の所有権です。
ところが電子化やITの発達で所有権の概念を変える出来事が起こりました。
モノと所有権が1対1で紐付くとは限らなくなったのです。
iPhoneのアプリがまさにそうです。
自分のアカウントでいったんアプリを購入すると、そのアカウントにそのアプリの所有権が紐付きます。
ところが、そのアプリをあとで削除しても、アカウントの所有権は消えません。ずっと残っています。
ですので、再びそのアプリを無料でダウンロードすることができます。
所有権が「実際にモノを持っている」という権利ではなく、「モノを持つことを認められる」という権利に変わったわけです。
ですので正確に言えば所有権ではなく、財産権と言った方が良さそうです。
実際にモノとしてそこに存在するかどうかは関係なく、自分の名義として認められるという権利です。
そして、アプリというのは複数の人に簡単にコピーされていきます。一つのアプリが大勢の人からダウンロードされることでビジネスが成り立っています。つまりモノと所有権の関係が1対1ではなく、名義の数だけ増えていくことになります。
所有権を主張するには、本のような実物であれば、実際の本が必要になります。いくらあの本が自分のモノだと主張しても、実物の本が無ければ読むことはできませんし、仮に他人が持っている同じ本を見せてもらったとしても、それはあくまでも他人の所有物です。
でもダウンロードの場合は実物は不要です。本人であることが確認できれば、それで所有権の証になります。
それがアカウントと鍵(パスワードや暗証番号)です。
アカウント(名前)と鍵を持っていることによって、それを手に入れる権利が証明されるわけです。
アプリの仕組みはまさにこれを利用しています。
実物財産でこれに近いのが、おカネです。おカネはは紙幣や硬貨としてはもちろん現物が必要ですが、現代社会ではおカネというのは多くがアカウントと鍵で成立します。
もし常に現物が必要であればお金はずっと家に置いておき持ち歩く必要があります。
でも実際には、銀行などに預けられています。もちろん銀行の中には紙幣という現物が山積みにされているわけではなく、名義に金額が記録されているだけです。
あなたが銀行に100万円預けているからと言って、実際に銀行に1万円札が100枚あるわけではなく、あなたの名義に100万円という数値が記録されているだけです。
これによって、あなたはいつでもどこでも100万円を引き出す権利をもっているわけです。
まさにアプリのダウンロードと同じです。
ところが、似たようなビジネスながら、ことなるアプローチをしているモデルがあります。
それが、iTunesの音楽ダウンロードです。
いったんその楽曲をそのアカウントで購入してダウンロードしても、間違ってダウンロードしたものを削除してしまうと、同じアカウントであっても再び購入する必要があります。
つまり、ダウンロードという形式はとっているものの、所有権とモノとか1対1で紐付いているわけです。
これには各楽曲提供者の著作権が大きく絡んでいるわけですが、すでにアプリでの再ダウンロードが実現している今、ユーザーの不便以外の何者でもありません。
9 to 5 Macの記事では、これが改善され、いったん購入した楽曲は同じアカウントで再ダウンロードができるようになる可能性について書かれています。


Apple negotiating unlimited song downloads/permanent music backups for iTunes? / 9 to 5 Mac


各レコード会社と合意に至るかどうかは不明ですが、ITのメリットの一つであるモノと所有権の1対1の紐付けからの解放は時代の流れであると思いますし、そのことが著作権者にとって大きな不利益とも思えません(同じモノを2度購入させる機会を失うという多少の不利益はあるでしょうが)。
ぜひ、実現することを願っています。