借金という名の経営戦略
みなさん、こんにちは!
B-CHANです。
今日は、良い意味でも悪い意味でも好きな人も嫌いな人も多いソフトバンクという会社と孫正義氏の話。
企業ファイナンスに詳しい人には読む価値の無い内容なので、時間がもったいないですし、他のページへ移ってください。
逆にファイナンスとか詳しくなくて、ソフトバンクって借金だらけで大丈夫なの?と思ってる人は読んでみてください。
まず大切なことですが、「借金」と「赤字」を混同している人がたまにいます。
借金というのは企業が儲けるための手段として行う経営戦略のひとつです。
こういうのを読んでみてください。
無借金経営って良いこと?(ファイナンスの基本) - 非天マザー by B-CHAN
借金をするから企業は大きな利益を出すことができることを知っておいてくださいね。
一方、赤字とは、売上よりも経費のほうが多かった結果です。
借金は事業を行うための手段であり、赤字は事業の結果です。
両者には何の関係もありません。
ソフトバンクの話
ソフトバンクや孫正義氏が投資した20億円が、アリババIPOで5兆円に化けた話。実に2500倍も株価があがったことになります。 - クレジットカードの読みもの
あいかわらず孫さんの投資眼力はすごいです。
基本的に孫さんはIT経営者ではなく、投資家ですから。
ソフトバンクが2006年に日本の携帯電話市場に参入する時に2兆円の借金をしました。
当時のソフトバンクの企業規模から見れば、身の丈を超えた巨額の借金だと言われていました。
しかし、その後、ソフトバンクは毎年のように最高益を更新していますよね。
まさにさっき書いたように、借金という戦略が大きな利益を生み出しているのです。
ここでみなさんに知っておいて欲しいことがあります。
借金をする以上、おカネを貸す人(貸し手)がいます。
貸し手というのは、当然ながら、金利で儲けるわけです。
100万円貸して100万円返してもらったのでは仕事になりませんし、時間が経過している分、損失です。
100万円を1年間貸して金利が3%なら、103万円を返してもらって、3万円が儲けですね。
つまり借りた人(借り手)は1年後に103万円を返す「能力」が要求されます。
例えば、仕事もしてなくて貯金が底を尽いてピンチの人に、事業として金利3%で100万円を貸すのは基本的にありえないですよね。その人が1年後に103万円を返せるあてが無いんですから。
てことは、貸し手は借り手の返済能力を見ます。これが審査です。
一般的には返済能力の基本は借り手の収入ですね。
サラリーマンが住宅ローンを借りるときには年収を調べられます。
月給25万円の人が毎月25万円返済のローンなんか組めるわけ無いですからね。
将来にわたって一定の収入が見込めることが審査の決め手です。
しかし借り手の収入だけに頼ると、借り手の勤務先会社が倒産したり病気などで無収入になると返済できなくなります。
そこで銀行などの貸し手は、不動産などの担保を取ります。
万が一借り手の収入が途絶えて返済不能になると、不動産を取り上げて売却して穴埋めするわけです。
年収数百万円程度のサラリーマンが数千万円という「身の丈を超えた」借金ができるのは、不動産という担保の存在のおかげです。
物的担保の無い借り入れ
では、ソフトバンクが携帯電話事業に参入した時に借りた2兆円に対して、ソフトバンクは2兆円の不動産などの資産を持っていたのでしょうか。
いいえ、持っていません。そんな担保は無しです。
ソフトバンクの2兆円の負債は、ホントの意味で「身の丈を超えた」借金だったのです。
「よくそんなのに2兆円も貸したな〜。貸し手も勇気がいるよな〜。」
と思ったあなたは鋭い。
実は、ソフトバンクの携帯電話事業参入にはLBO(レバレッジド・バイアウト)という手法が使われました。
これは、借金の返済原資を、事業の将来の収入から充てることを前提に事業買収資金を借り入れるという手法です。
当時のソフトバンクには2兆円もの担保が無かったので、普通なら借りられませんが、2兆円を借りて、その資金で携帯電話事業に参入すれば、そこからは毎年数千億円の収入が生まれるので、それで返済していくという意味です。
「今はカネが無いけど、カネを貸してくれれば、それで事業買収して、わんさか収入が増えるから、それで返済するよ。」
つまり、完全な出世払いです。
これがLBO。
土地などの物的な担保が必要な住宅ローンのような借金であれば、万が一借り手の収入が無くなっても担保を回収できるので、審査が甘かったりデタラメだったりします。
これは元銀行員のボクだから言えるのかもしれませんが。
おかげで、バブル崩壊の時には多くの銀行の経営がピンチに陥りました。当時の銀行の審査能力がいかに低いかがよくわかる事例でしたね。
しかしLBOでは物的な担保では無く、将来の事業の収益性が担保です。
つまり、貸し手は、その事業の将来性を慎重に審査する必要があります。
なにせ、失敗しても不動産などの担保が無いので回収できないんですから。
投資への強い眼力が必要なわけですね。
カネを借りる側の孫さんも、カネを貸す側の銀行団(複数の銀行たち)も、携帯電話事業の将来性に強い期待があったからこそ実現したソフトバンクの2兆円借り入れ。
かつてのバブル期の金融業界から、ずいぶん進化したと感じた出来事でした。
ちなみにですが、KDDI発足時も2兆円の負債があったのは意外と知られていませんね。
さっきの記事でも書きましたが、トヨタ自動車には10兆円を超える負債があります。
借金はソフトバンクの代名詞でも無いですし、負債という経営戦略が利益を生み出すエンジンになることを知っておいて欲しくて、この記事を書きました。
ファイナンスという世界共通言語
ファイナンス(資金調達、管理)は、すべての業界のすべての企業に共通する課題です。
自動車業界でも、IT業界でも、食品業界でも、大企業にも、ベンチャーにも、どこにでも存在します。
これを読んでいるあなたがもし将来、会社の役員クラスになったときには、資本コストの問題(借り入れで資金を調達するか、株式で資金を調達するか)に直面するでしょう。
企業勤めの人は、今のうちにコーポレート・ファイナンスの知識を身に付けておくことをオススメします。
次は、ノンリコース・ローンについて書いてみようかどうか、考え中……。
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