保険ランキングの無意味さ
ボクの多様な職業経験のひとつが保険外交員です。
保険を嫌う人も多いですが、保険は人類の歴史の中で、偉大な発明のひとつです。
保険が発明されるまでは、事故や災害に遭った人は絶望するしかありませんでした。
しかし、保険の発明により、リスクをみんなで少しずつ分担できるようになったわけです。
例えば1000人の村で、Aさんが事故に遭って治療費が1万円必要な場合。
保険が発明されるまでは、Aさんが自分で1万円を持っている必要がありました。
つまり、Aさんが貧しければ、治療をあきらめるしか無かったんです。
でも、保険制度によって、あらかじめ1000人が10円ずつ出し合っておけば、Aさんが事故に遭った場合、その合計額である1万円が治療費に使えます。
ひとりひとりの負担額はたったの10円で、一部の被害者を救うことができるんです。
だからボクは保険のシステムそのものはすばらしいと思っています。
それでも嫌われるのは、そう言うすばらしい信念よりも、良くない「売り方」に問題があるからだと思っています。
ボクの保険記事を2本読んでみてください。
親戚だから保険に入ってください、だけでは説得力はありません。
もちろん親戚に保険に入ってもらうこと自体は良いと思うんですが、その場合でも、その人が保険を必要としているかどうか、必要なら、どんな目的かを正確に分析して、最適なプランニングを行うべきです。
決して、保険会社にとって利益率の高い保険を売るような売り方をしてはいけません。
ここに多くの保険の売り方に問題があるんですよね。
銀行の窓口での保険販売なんて利益優先で保険のアマチュアだらけ。
そりゃ、嫌われるのも当然です。
で、ボク自身は、20年間、ガン保険に入っていました。
それを先月、すべて解約したんです。
ここでも単純に考えないでほしいんです。
ガン保険が必要かどうかは人それぞれです。
ガン保険はその名の通り、ガンに罹患したら給付金が支払われる保険です。
と言うことは、ガンに罹患したときにも給付金が不要な人はガン保険に入る必要がありません。
例えばおカネをたくさん持っている人ですね。
おカネをたくさん持っていて入院費や治療費や治療中の生活費を自分でまかなえるのならガン保険はいりません。
逆に、明日、ガンで入院したらすぐに生活費に困るような人はガン保険は大きく役立つでしょう。
こんな風に、保険って、内容の善し悪しはたいした問題じゃ無いんです。
大事なのは、ひとりひとりの目的にあっているかどうか。
なのに、雑誌などで、
保険ランキング
の特集があり、それに影響されて保険を選ぶ人たち。
言い方が悪いですが、マヌケそのものです。
でも仕方がありません。一般の人は無知ですから。
無知でかつ勉強する気も無い大衆を煽って契約させるのは世の常です。
勉強熱心で知識・知恵がある人はそんなのには引っかからないんですが、大半の人はそうでは無いので、まんまと流されます。
今さらですが、保険の人気ランキングなんて無意味です。
年齢、体質、家族構成、財産の大きさ、目的、環境などで保険の必要性と必要な保険の種類は異なります。
保険料が月に3万円だとすると、それは毎月3万円のローンを組むのと同じ。
20年も加入したら保険会社に720万円支払うんですよ。
みなさん、720万円のクルマを買ったことありますか?
ごく一部の人だけでしょ?
と言うか、もしホントに720万円のクルマを買うなら、どんな車種にするか、真剣に検討しますよね。
よくわからないクルマだけど人気があるから720万円のクルマを買っておこう、なんてやりますか?
それをなぜか保険では平気でやってしまうんです。
もったいない!
ガン保険を解約する
で、ボクは社会人になってすぐに複数のガン保険に入っていて20年。
加入した当時はよくわかっていませんでした。ありがちですね。
で、改めて徹底的に調べていたんですが、ボクが加入していたガン保険は解約返戻金が比較的大きなタイプ。
解約返戻金とは解約時に返ってくるおカネのこと。
ボクの加入していたガン保険は20年目あたりに解約返戻率が最高の60%くらいになり、それ以降は下がっていきます。
つまり、いま解約すればこれまで支払った額の60%を取り戻すことができます。
もしそのまま加入し続け、あと5年10年とたてば、解約返戻率は50%、40%、30%と下がっていき、最後にはゼロになります。
一方で、保険料(保険会社に支払うおカネ)は一生続きます。つまり負担は一生続くのです。
もちろんボクはこれから人生の後半戦なので、ガンにかかる可能性は高まるでしょう。
ガンにかかる可能性が高まる後半にガン保険を続けておくか、それとも解約してガン保険無しにして解約返戻金を受け取るか。
ボクは後者を選びました。
なぜだかわかりますか?
明日、もしガンにかかったらどうするか?
もちろんボクは目先のおカネが欲しかったわけではありません。
明日のことも来月のことも考えてあります。
それが高額療養費制度。
日本は公的保険が充実した国ですねえ。
入院治療費はどんなに高額になっても、たいていの人は自己負担額は月に9万円くらいで済むんです。
月に3万円も民間の保険に払ってしまうと、それだけで年間36万円の負担。
それなら、その保険をやめたら、年間で36万円もおカネが余ります。
もし入院しても、そのおカネで4ヶ月も入院できちゃいますよ。
罹患するかしないかわからない病気のために毎年36万円も負担するのなら、そのおカネをコツコツと貯めておく。
入院すれば、そのおカネを入院治療費に使える。
入院しなければ、そのおカネを他の用途にも使える。
民間保険に加入するよりも柔軟に使えますよね。
しかも、民間保険には条件があって、もし該当の病気以外なら給付金がもらえないかもしれない。
手元におカネを持っておけば、自由に使える。
勘違いしないで欲しいんですが、最初に書いたように、保険の仕組みはすばらしいです。
ボクのこの記事を読んで、
じゃあ自分もやめよう!
と安易に思わないで欲しいです。
ボクは、自分の環境を熟慮して、今回の決断をしたんです。
そして、解約してわずか3日後には解約返戻金が口座に振り込まれました。
このあたりは、さすがに早いです、アフラック。
いや、今どきは、どの保険会社も対応は早いですけどね、競争が激しいので。
いずれにせよ、ボクは、ガン保険をを失う代わりに、かなり大きな金額の払い戻しを受けました。
もしガンになれば、このおカネを入院治療に使います。
ただし、ボクの今回の目的は、資産運用です。
おカネを保険会社に支払ってしまえば、その運用は保険会社が主導権を握ります。
しかし、おカネを自分が握っていれば、自分の裁量で運用できます。
ボクはもちろん今回のおカネを銀行預金として預けておくつもりはありません。
さっそく世界中の投資先に振り分け始めています。
まだまだ全額を使い切っていないので、どこに投資するかを悩んでいる最中です。
解約返戻金
今回の話を読んで、
じゃあ自分も解約返戻率の一番高くなるタイミングまで待ってから解約しよう!
と思った人。
早とちりしないでくださいね。
簡単な数値で説明します。
例えば毎月1万円の保険料だとします。
解約返戻率は、
- 1ヶ月目:0%
- 2ヶ月目:10%
- 3ヶ月目:30%
- 4ヶ月目:60%
- 5ヶ月目:30%
- 6ヶ月目:0%
だとします。
じゃあ4ヶ月目に解約すれば一番オトクだな!と思わないで。
こう書きましょう。
- 1ヶ月目:累計保険料 1万円:返戻金 0円:失う額 1万円
- 2ヶ月目:累計保険料 2万円:返戻金 2000円:失う額 1万8千円
- 3ヶ月目:累計保険料 3万円:返戻金 9000円:失う額 2万1千円
- 4ヶ月目:累計保険料 4万円:返戻金 2万4千円:失う額 1万6千円
- 5ヶ月目:累計保険料 5万円:返戻金 1万5千円:失う額 3万5千円
- 6ヶ月目:累計保険料 6万円:返戻金 0円:失う額 6万円
お、確かに4ヶ月目が一番失う額が少ないじゃん、だから4ヶ月目に解約しよう。
そう思いますか?
見落としていますよ。
よく見てください。1ヶ月目で解約したら失う額は1万円で済みます。
そして、もっと大きな見落としがあります。
それはこの保険に加入しないことです。そうすれば、失う額はゼロです。
ボクの場合は、すでに20年が経過していました。過去には戻れません。そこで調べたら、今後も続けるよりも、いま解約した方が解約返戻金が大きいことがわかったんです。で、解約を決断しました。
もし20年前のボクなら、最初から加入しないことを選んでいたでしょう。
失う額を小さくしたいなら、とにかく加入しないか、あるいはすぐに解約することです。
そして、そのおカネを長期運用に回します。
おそらくそうすれば、今回戻ってきたおカネよりもはるかに大きな金額が今ごろできあがっていたでしょうね。
あと、そもそも保険の種類によっては解約返戻金がほとんど無いタイプもあります。
それくらい複雑な保険。なのに多くの人は理解せずに契約。
いかがでしたか。
保険大好きな日本国民。
1世帯当たりの月額保険料平均値は5万円らしいです。
繰り返しますが、保険の仕組み自体はすばらしい発明です。
必要とする人にはホントに役立ちます。
しかし、大半の家庭は、毎月5万円を捨てるような加入の仕方なんです。
まあそのおかげで保険会社は儲かり、中小企業では考えられないような立派なビルで働けるんですけどね。
あなたはどうですか?
よく知らずに720万円のクルマをローンで買うようなことをしていませんか?
大半の不勉強な人が損をして、一部の勉強している人がトクをする。
世の中は努力した人が報われるのですよ。
本を読むなど、少しだけでいいから努力しましょうよ。それだけで何百万円も損得が変わるかもしれませんよ。