話その1……入試
こんな話を考えてみてください。
ここに、東京大学の入試に現役で合格した人が10人いるとします。
この10人を調べてみると、10人全員が、とある神社で合格祈願をしていたことがわかりました。
それ以来、その神社には受験生が殺到するようになりました。
話その2……宝くじ
ここに、宝くじで1000万円当たった人が10人います。
その10人を調べてみると、宝くじを買う前に全員が、とある占い師さんのアドバイスを受けていたことがわかりました。
それ以来、その占い師さんの元にはアドバイスを求める人が殺到するようになりました。
話その3……病院
ここに、手術を受けて無事に回復して退院した人が10人います。
その10人を調べてみると、10人とも同じ病院で手術を受けたことがわかりました。
それ以来、その病院に手術を依頼する患者が殺到するようになりました。
思考力を働かせて論理的なおかしさを見抜く
みなさん、おかしな点に気付きましたか。
別に、神様とか占い師さんとか病院を信じるかどうか、という話ではありません。
もっと明確に具体的に論理的におかしな部分があります。
話その1のケースから考えましょう。
実はその神社には受験生が事前に1万人訪れていました。
そして、その中で合格したのは、その10人だけでした。
つまり、1万人中9,990人は不合格だったのです。
ほとんどの人が不合格になる神社だと言ってもおかしくない話です。
しかし、目の前の10人の合格者だけのことを考えると、非常に御利益の高い神社だと思い込んでしまします。
話その2も同じですね。
実は、その占い師さんのところへは事前に1万人が相談に来ていました。
しかし当選したのは10人だけで、残りの9,990人は全員ハズレでした。
その占い師さんは99.99%ハズレるということです。
しかし目の前のことしか考えない人たちは、まんまと間違った判断をしたわけです。
話その3も全く同じ。
その病院で手術を受けたのは1万人いました。
そして、その10人は奇跡的に生き残った10人で、残りの9,990人は命を落としました。
つまり、その病院で手術を受けることは非常に危険なわけです。
しかし目先のことだけで判断した多くの人たちは、その病院で手術を受けることを希望しています。
実は多くの人がこれに当てはまる
上記の話を読んで、どう思いましたか?
実は、世の中の多くの人はこのタイプの間違いを犯します。
例えば、犯人の自宅を捜索すると●●が出てきた。だから●●を規制しよう。なんてのはありがちな話ですが、上記と全く同じ間違いです(よく考えてくださいね)。世論が逆の判断をしてしまっているのに、それに気付いている人が少ないんです。
ボクは以前からずっと言ってるんですが、世論が正しいという思い込みは間違った判断をする可能性があります。
例えば、某独裁国家では、将軍様への絶対忠誠が正しいという世論です。
あるいは戦前の日本のように、戦争することが正しく、戦争に反対するのは非国民という世論もありました。
多くの人が言っているから正しい、とは限らないということです。
物事はきちんとうわべや支持する人数の多さではなく、きちんと中身を検証して判断しないと、間違いを犯し、不幸を招きかねない、ということです。
ほぼハズレる占い師さんのことを、よく当たる占い師さんだと思い込んで大金をつぎ込むのは自由ですが、それで損失をだすのはその人です。
下手な病院を上手な病院だと思い込んで命を落とすのはその人です。
これらは、あくまでも例ですが、きちんと論理的に物事を考えるのが、大切な命を守るためにいかに大事かがわかりますよね。
過去の記事も読んでみてくださいね。
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