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電子書籍やゲームのダウンロードの価格に関して抜け落ちている話

電子書籍、ダウンロードゲームの価格への疑問に対する見解

ゲームのダウンロード価格


人気ブロガーの、もとまかさんが面白い記事を書いていました。


ゲームのダウンロード版は本当に高いのか - もとまか日記


もとまか日記はボクもよく読んでいますが、彼はおそらく経済学などを専門的に学ばれた人では無いと思います。
しかし論理的思考をきちんと身につけておられるので、当然におかしいと思う事象はきちんと論理的整合性が伴っています。
そうです。


書籍にしてもアプリにしても、ダウンロード版のほうが製造・流通コストがかからないんだから価格が安くないとおかしい。


という、世の中にありがちな意見に対する見解です。
ボクも、もとまかさんと同じ見解なのはボクのブログを以前から読まれている方にはわかると思います。


バナナの話

需要と供給


書く順番を悩みましたが、先にこれを読んでもらったほうが早いですかね。

経済学を全く知らない人だけにオススメの経済学……需要と供給と物価の決まり方


例えば、製造コストがまったく同じ2つのバナナAとバナナBが売られているとします。
ただしバナナAは作り方が上手でとてもおいしくて価格は1本50円。
バナナBは作り方が下手で味がまずくて価格は1本20円。
両者は製造コストはまったく同じなんですが味に差が付いているため、高くてもおいしいバナナAもある程度売れます。
つまり、おいしいという部分に価値を感じる人は、それにオカネを出すわけです。
同じ製造コストなんだからバナナBを買わないと損、とは必ずしもなりません。
バナナの生産コストなんて買う人には関係ないわけです。
需要があれば売れて価格は高値になり、需要が無ければ売れなくて価格を下げざるを得ません。
なのでもしバナナAの味に魅力を感じる人が減って、売れる本数が減ったなら、売るためには価格を下げるしかありません。


Appleの話

Apple


アップル社は利益率が30%という世界のメーカーの中でも驚異的な高利益企業です。
逆に言えばAppleの利益を減らせば、もっと安くiPhoneを売ることもできるわけです。
それでも高値でiPhoneがたくさん売れます。
製造コストよりもはるかに高い価格で売れまくるわけです。
なぜなら買う人はiPhoneに価値を見出しているからです。
「日本ではiPhoneは実質無料で手に入るから安い。」
という人もいるかもしれませんが、それは携帯電話会社が代わりにiPhoneの価格を負担しているからです。
つまり当然、毎月の料金に跳ね返っているだけで、結局はユーザーが負担しているのです。
(もしiPhoneがもっと安ければ、毎月の携帯電話料金はもっと安くできるわけです。)


電子書籍やゲームの話

価値は製造コストでは無い


電子書籍も同じです。
紙の書籍と違って流通製造コストが無いんだから価格が安くないとおかしい、という人がいます。
当然、間違いです。
バナナの話と同じです。
紙の書籍には、書店へ買いに行くか通販で買って配達待ち、保管場所が必要、持ち歩くのが重い、検索ができない、経年劣化する、内容がアップデートされない、コピペやSNSなどへのシェアが面倒などのデメリットがあります。
電子書籍は逆に、その場ですぐに買ってダウンロードできる、保管場所不要、大量に楽に持ち歩ける、検索が可能、経年劣化しない、内容がアップデートされる、コピペもシェアも簡単です。
つまり、仮に紙の書籍と電子書籍の価格が同じなら、紙の書籍を買ったほうがトク、とはならないわけです。
ゲームでも同じですよね。
ここでいうモノの価値=価格は製造コストで決まるのではなく需要で決まります。
そしてそれは世の中つまり経済の大原則です。
製造コストが同じならバナナBを買ったほうがトクとはならないわけです。
バナナAには高くてもバナナBには無い価値があるからです。
当然、電子書籍は製造コストも流通コストもほとんど無いので安く作れます。
電子書籍と紙の書籍が同じ価格なら電子書籍のほうが損だからと言って紙の書籍を買うと、電子書籍のメリットのすべてが手に入らないということになります。
もし電子書籍と紙の書籍が同じ価格なら、同じ価格にもかかわらず電子書籍には大量のメリットがあるんだから、むしろ紙の書籍よりもオトク、となるわけです。


給料の話

給料


あなたがサラリーマンとしてC社に就職するとします。
他の条件はまったく同じで、給料が月給20万円と月給50万円の好きな方を選んでくれと言われたらどうしますか。
当然、50万円を選ぶでしょうし、選ばないとバカです。
つまりあなたのスキルという商品にC社は50万円という価格で買っても良いという意思表示をしているわけです。
それをわざわざ20万円で売るのは不合理であり失格です。
会社経営も同じです。
50万円で売れる商品をわざわざ20万円の価格で売るのは経営者失格です。
会社の目的は利益を得ることであり、株主や従業員に還元することです。
50万円で売れる商品を20万円で売ってしまうと株主の利益も減りますし従業員の給料も減ります。
きちんと需要と供給に見合った価格設定をするのが健全な経営です。
50万円はぼったくりではありません。
強制的に買わせるわけではなく、消費者が自分の意志で買うからです。
逆に言えば消費者が不要だと思えば買わないわけです。

1万円の食パンはぼったくり?(経済学の簡単なお話)


需要と供給は心理

価格は心理


最初の話に戻りますが、世の中はすべて経済で成り立っています。
そして経済は人間心理です。
欲しいと思う人がたくさんいる=需要が高いと価格は上がります。
欲しいと思う人が少ない=需要が低いと価格は下がります。
バナナAの味を好む人が多ければ価格は高くなります。
iPhoneを好む人が多ければ価格は高くなります。
電子書籍やダウンロードゲームのメリットを好む人が多ければ価格は上がります。
オークションに出品してみましょう。
物価がリアルタイムで測定できるので経済=世の中の仕組みが理解しやすいです。
その商品を欲しいと思う人が多いほど価格は上がっていきます。
製造コストは変わらないのに、需要が高いと価格は上がっていくわけです。
逆に人気が無い商品だと、例え製造コストが1000円なのに、100円でしか売れないかもしれません。
いくら製造コストが1000円だと言っても、買う人がいないつまり需要が無ければ1000円以上では売れないのです。
物価は需要と供給で決まるのです。
製造コストは関係ありません。
1000円で売れる電子書籍をわざわざ700円で売る会社があれば、経営者は無能ですし、株主や従業員を不安な立場に追い込みます。
紙の書籍と電子書籍が同じ価格なら紙の書籍を買うという人もいます。
その人は紙の書籍のメリットを手に入れて電子書籍のメリットを捨てます。
逆に紙の書籍と電子書籍が同じ価格なら電子書籍を買うという人もいます。
その人は電子書籍のメリットを手に入れて紙の書籍のメリットを捨てます。
モノを買う判断基準というのは価格だけでは無いわけです。
別にバナナとApple製品と電子書籍とゲームだけではありません。
自動車でもテレビでも何でもそうです。
それらを総合して需要は決まり、そして需要と供給によって価格は決まるのです。


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