超高性能な人工知能
もう、ずいぶん昔の話になります。
ボクがまだ関西に住んでいる頃。
20歳代でしたかね。
当時付き合っていたカノジョと、とある博物館に行ったんですよ。
大阪でしたね。
その博物館にはいろんなマトモじゃないモノがあって驚かされたんですが、今回は、一番最初に設置されていた人工知能について。
そいつは、入り口から入ってすぐの所に設置されていました。
見た目はパソコン。
画面とキーボードがあります。
で、キーボードで何でも好きな言葉や文章を入力できるようになっているんですよ。
なので、まずは手始めに、
こんにちは。
と入力してみました。
すると、画面には、
こんにちは、良いお天気ですね。
と返って来ました。
なるほど、人工知能らしい。
そこでボクは、
あなたの名前は何ですか。
と聞いてみました。
すると人工知能は、
私は●●●です。あなたの名前は?
と返してきました。
ボクは、
私は●●●です。
と自分の名前を答えました。すると、
良い名前ですね。ところであなたは何歳ですか?
とおせじが返って来て、さらに逆質問が来ました。
ボクは、
28歳です。
なんて答えたんですが、画面には、
そうなんですか。若く見えますね。
と表示されました。うーん、なかなか高性能な人工知能。
当時の人工知能なんて今と違ってまだまだ発展途上。
人工知能と言っても言語を理解すると言うよりも、入力したパターンを単語解析して、いくつかのパターンの解答から選択して答える、その程度の認識でした。
ロールプレイングゲームをやっていて村人に何度も話しかけると、同じ答えしか返して来なくなるでしょ。あれですよ、あれ。
パターンは決まっているはずです。
で、ボクは少し難しい質問をしました。
これで何人目のお客さんですか。
すると人工知能は、
数えていないのでわかりません。
なんて答えて来たんです。うーん、驚き。質問をきちんと理解して返して来たからです。
いや、偶然でしょうか。
続けて、
好きな食べ物は。
とボクが訊くと、人工知能は、
焼き肉が好きです。
と答えました。完璧。これは、かなり高性能な人工知能だわ。
そう思いながら、いろんな話をしてみました。
寒いのと暑いのとどちらが苦手ですか。
寒いのが苦手です。
音楽は何が好きですか。
静かな音楽が好きです。あなたは。
ダンスミュージックが好きです。
今日はどうやって来たのですか。
自動車で来ました。
自動車を運転してみたいです。
など、あまりにも高性能っぷりを発揮したのです。
で、ボクは手の指を3本立てて、
これは何本。
と訊くと、カメラで読み取って、
3本です。
と答えたのです。カメラで読み取ることがすごいのでは無く、その質問を正確に理解して答えを返して来るところがすごいんです。
驚きながらも、ボクは、
そろそろ次に進もうかな。
と書くと、
どうぞ。いろんな展示を楽しんでくださいね。
と表示されました。
もはや、人工知能としては完璧。
いや〜、技術はここまで進んでいるのか。
そんなことを考えながらボクたちは奥へ進みました。
衝撃
その博物館は2階建てでした。
1階でいろんな展示物を楽しんだ後、2階へ上がりました。
2階で見つけたのが、1台のパソコン。
そこにはキーボードがあり、画面には、映像と文字が。
何だろうと思って見ていると、知らない人が画面に映りました。カップルのようです。
どうやらパソコンの前にいるようです。
で、その人は何やら入力し始めました。
すると、ボクの目の前にあるパソコンの画面に、
こんにちは。
と表示されたんです。
なるほど!
そういうことか!
ボクはすかさず、キーボードで、
こんにちは。
と入力しました。画面に映っているカップルはうれしそうな顔。
今度は、
ここはどこですか。
と入力して来たので、ボクは、
大阪市港区ですよ。
と入力しました。
そしてボクは続けて、
仲の良さそうなカップルですね。
と入力。画面に映っている人は驚きの表情。
いかがですか?
もうわかったでしょう。
そうです。
人工知能では無く、単なる1階と2階との人間同士のチャットなんです。
しかし、入り口から入ったばかりの人は、それが人工知能だと教えられるので、その高性能ぶりに驚きの連続。
人間の思い込みを利用したトリックです。
ボクも引っかかりましたし、引っかかったボクが今度は引っ掛ける側に回る。
面白いじゃないですか!
世の中で起こっている現象の表面だけを捉えて、それを信じ込むと、まんまと引っかかることがある。
ボクの今のねじれた性格は、このときに生まれたのかも知れません。
手品にはタネも仕掛けもあるんですが、超能力者や占い師や霊媒師はなぜか無条件に信じてしまう人たち。
宇宙人が作ったと言われたミステリーサークル。
実際には人間が作ったモノであり、後でネタバレされました。
雷って単なる電気の放電現象ですが、それが解明される前の時代の人たちは、神の怒りだと言って恐れました。
見た目だけで判断すると、事実と異なることがあります。
事実と異なることに基づいて判断すると、命すら落とすことがあります。
交通信号は、赤が止まれで、青が進んでも良い、ですが、これを逆に覚えると危険ですよね。
大衆とは概して、見た目でダマされるモノなんですが、このブログの読者のみなさんはぜひ、自分でロジカルに考えて判断できる人になってくださいね。
博物館の人工知能程度なら、ほほえましい話ですが。