自社ビル
電通が汐留の自社ビルを売却すると言うニュースが流れました。
電通のビルと言えばカレッタ汐留のビルですね。
ボクも何度も行ったコトがありますし、多くの人におなじみのビルでしょう。
売却規模は3000億円前後になりそうとも言われる巨大取引きですね。
電通は、そのビルを売却した後も、賃料を払い続けて入居するようです。
今までは自社ビルとして使っていたビルを売って、今後は借りると言うコトですね。
さて、みなさん、なぜ自社ビルを売って、わざわざおカネを払って借りるのか、わかりますか?
資産
会計・財務リテラシーのある人と無い人とで、理解が大きく分かれると思います。
投資の概念を理解する必要があります。
例えば。
1万円を投資して商売をして5千円儲かる投資。
2万円を投資して商売をして5千円儲かる投資。
どちらが良い投資でしょうか。
投資の目的がリターンつまり利益を得るコトであれば、もちろん前者の方が良い投資ですね。
少ない金額で儲かるわけですから。
株式会社(に限りませんが)は、投資を得て、それを元手にしてビジネスをして利益を稼ぐ仕組みです。
自社で保有しているモノはすべて資産です。
例えば現金、預金、自社ビル、自社自動車など。
これらの、現金、預金、自社ビル、自社自動車などは、それを所有するために元手が掛かっていますよね。
それが投資です。
仮に、現金1万円、預金1万円、自社ビル1万円、自社自動車1万円だとすれば、それらを所有する元手は合計で4万円。
会社はそれらを使って稼ぐわけですね。
それで1000円稼げたとしましょう。
すると、資産に対する儲けは、
1000円 ÷ 4万円 = 2.5%
です。
4万円の投資で1000円を稼いだと言う比率ですね。
これを、
ROA(総資産利益率)と言います。
当然ですが、投資家から見れば、同じ金額を稼ぐなら、より少ない投資の方が効率が良いですし、同じ投資額なら、より多く稼いで欲しいですよね。
つまり、経営者は、株主から、ROAを上げるようプレッシャーをかけられますし、それが仕事です。
と言って、成長企業でも無い限り、利益額を毎年のように増やすのは困難です。
安定した企業なら、毎年だいたい同じような利益になります。
そこで、ROAを上げる策として、利益(分子)を増やすのでは無く、資産(分母)を減らす方法を採るわけです。
それが今回の電通。
現金1万円、預金1万円、自社ビル1万円、自社自動車1万円のうち、自社ビル1万円を売って手放すわけです。
すると、資産は、現金1万円、預金1万円、自社自動車1万円の合計3万円に減ります。
これで1000円を稼げば、
1000円 ÷ 3万円 = 3.3%
と、ROAが上昇しますよね。
実際には、売った自社ビルに入居する賃料分の利益は減りますが、利益額が750円まで減ってもROAは2.5%です。
つまり、賃料が250円未満なら、自社ビルを保有するよりも、ROAを上げるコトができます。
電通は、そう言う判断をしたわけですね。
そうして、もうひとつ、売却メリットがあります。
それは、大きな現金が入ってくるコトです。
不動産は不動産としてしか使えませんが、現金なら、使い道は様々ですよね。
福利厚生に使ったり、借り入れを返済したり、何かに投資したり。
あるいは株主に返したり。
昨今は、新型コロナウイルスの影響で企業業績が未知数であるため、いざと言うときのために、現金をある程度保有しておくのは安全策として重要です。
会計と財務、企業戦略の観点から、自社ビル売却にはメリットがあります。
もちろん、自社ビルを保有するコトにもメリットがあります。
どちらが絶対的に良い、と言う正解はありません。
企業(特に上場企業)が何らかの動きをした場合には、たいていは客観的な妥当性があります。
多くの企業が無借金では無いのにも理由があります。
そんな目線でニュースを見て、気になるコトを調べていけば、勉強になると思いますよ。