事実と異なっていることでも自分に都合の良い主張をしてしまうのが問題
みなさん、こんにちは!
B-CHANです。
何度か書いてきましたが、原発推進派の意見には誤っている点があり、ボクは素直に支持できないんです。
そして、原発反対派の意見にも誤っている点があり、これまたボクは素直に支持できないんです。
原発推進派も原発反対派も、それぞれに事情があると思うので、どちらを支持するかは個人の自由でしょう。
しかし、間違った知識に基いて主張してしまうと、自分が思っていたのとは違う結果になってしまうかも知れません。
だから、まずは正しい知識を身に付けてから主張したほうが良いと思います。
別に細かい専門知識を正確に覚える必要は無いですが、根本的な概念を間違えて事実と逆に考えてしまうのは問題ですからね。
原発のコスト
今回は、原発推進派の人たちが主張する、
「原発はコストが安い」
という話の誤りを紹介します。
ホントは会計の話なので会計知識が無いと難しいんですが、ここではがんばって会計知識が無い人にもわかるように説明します。
ただし、簡単な足し算引き算掛け算割り算は使います。
わかりやすくするために厳密な話からはかけ離れるかもしれないですが、ご了承ください。
事業の利益
まず、あなたが何か事業をすると考えてください。
事業にはおカネがかかります。
例えば、1年間の売上が100万円だとして、費用が70万円かかったら、残った30万円が利益です。
費用には何がありますか?
わかりやすいのは光熱費ですね。
水道料金や電気料金などです。
さて、企業は毎年、決算を行います。
決算とは1年間の売上や費用を計算して、いくらの利益が出たのかを計算することです。
例えば、売上が同じでも費用が小さければ利益は大きくなりますよね。
逆に費用が売上よりも大きければ赤字になってしまいます。
売上 - 費用 = 利益 ……A式
この単純なA式を使って企業は決算を行います。
この計算方法は原則として日本中(というか世界中)で統一されています。
その方法を「会計」と呼びます。
東京電力を始め、上場企業はすべて、この決算の内容を発表しています。
ここまではわかりますか?
基本的にはモノやサービスを売って入ってくる収入が売上で、何かを買ったりして支払うおカネが費用ですね。
費用にならないモノ
さて、ここから、ちょっとだけ応用。
何かを買ったら、さっきのA式の費用として計算するのが基本です。
しかし例えば、あなたが事業のために土地を買ったとしたらどうでしょう。
その土地で製品を作るわけです。
その土地を今、100万円で買ったとしたら。
そうです。
ここまでの説明なら、土地の購入代金として、費用が100万円となるわけです。
しか〜し!
実はこういう土地の場合、実は費用として計算しません。
なぜでしょうか。
水道や電気は使ってしまえば無くなりますよね。
そういうモノの場合は、それに払うおカネは費用なんです。
でも土地の場合は使っても残ります。
1回使って無くなる土地なら大変ですよね。
普通は土地は使っても使っても残ります。
長く使えるんです。
これと似た買い物ってあるでしょうか。
ありますね。
個人で言えば、家やクルマがそうですよね。
家もクルマも長く使えます。
こういう家やクルマのようなモノを別の言い方で何と言うでしょう。
そうです。
「資産」
です。
資産は試算できないし
会計では、こういう長持ちするモノを買った時には資産と呼び、費用としてカウントしないんです。
なぜだかわかりますか?
土地でも家でもクルマでも、水道や電気のように消えて無くならないので、後で売ることができますよね。
例えば極端な話、1000万円で買った家が1年後に幸運にも1000万円で売れたら、実質の負担額はゼロですよね。
つまり1円も費用がかからなかったことになります。
これがポイント。
土地のように資産として残るモノは必ずしも費用になるとは限らないというお話なんです。
最初の話に戻りますが、今年の売上が100万円で水道や電気などの費用が70万円なら利益は30万円です。
でも100万円で買った土地を費用として計算してしまうと、
売上100万円 - 光熱費等70万円 - 土地100万円 = マイナス70万円
はい、大赤字ですね。
でも実際には土地のおカネは費用には入れないので、利益は30万円になるわけです。
土地は将来売れるかもしれないからですね。
というわけで現時点では、この事業はちゃんと儲かる、という話になります。
繰り返しますが、ちゃんと儲かる、と言えるのは土地の購入代金が費用に入っていないからです。
試算に価値あり?
でもよく考えてください。
100万円で買った土地が将来100万円で売れる保証なんて無いですよね。
もし将来、景気が悪くなってその土地が20万円でしか売れなかったとしましょう。
すると100万円で買った土地が20万円で売れたわけですから、実際の負担額は80万円です。
その時に初めて、費用が80万円だと確定するわけです。
ここで土地をいつ売るかという話をします。
上記の事業で土地を1年後に20万円で売ったとしたらどうでしょう。
1年間の決算は、
売上100万円 - 光熱費等70万円 = 利益30万円
ただし、土地にかかったおカネ80万円も引く必要があります。
なので結局、
売上100万円 - 光熱費等70万円 - 土地80万円 = マイナス50万円
そうです。この土地を1年間しか使わなかったら50万円の損失です。
では、もしこの土地を3年間使ってから20万円で売却できたらどうでしょう。
3年間の売上と費用は同じだと仮定します。
まずは売上と費用は3年分。
1年目:売上100万円 - 光熱費等70万円 = 利益30万円……B式
2年目:売上100万円 - 光熱費等70万円 = 利益30万円……C式
3年目:売上100万円 - 光熱費等70万円 = 利益30万円……D式
この事業では3年間で合計90万円の利益が出ます。
しかし、3年で土地を20万円で売却すると、3年間で土地の代金として80万円かかっているので、上記のD式に付け加えます。
3年目:売上100万円 - 光熱費等70万円 - 土地80万円 = マイナス50万円……E式
結局、3年間を合計すると、
B式の利益30万円とC式の利益30万円とD式のマイナス50万円で、トータルで利益は10万円出ましたね。
この事業では、100万円で買った土地を1年間だけ使って20万円で売ってしまうとマイナス50万円になり、3年間使ってから売るとプラス10万円になるということです。
どっちにせよ、この土地を売却するまで、土地の費用はいくらになるかはわからなくて、買った当初には費用として計上できないわけです。
実際、上記のB式にもC式にも土地の費用は入っていないので利益が出ており、D式で初めて土地代が出てきたのでマイナスになりました。
てことは、いつまでも土地を売却しないで保有し続けたら、土地の代金は費用として計算されないことになります。
いつまでも土地の代金が費用として計算されないってことは、B式やC式のように利益が出せますよね。
では原発は?
さて、ここまで学んでもらえたら、東京電力の原発の話。
東京電力は原発を動かすために様々な機械や材料などを買ってきます。
それらの購入代金は上記で説明したように会計という方法で費用として計算していくわけです。
ただし上にも書いたように資産として取り扱うモノは費用の計算には入れません。
さっき書いたように、100万円で買った土地が20万円でしか売れなかったら80万円の費用が発生したことになりますが、それはあくまでも売った時点での話です。
それと同じように東京電力の原発のために買ったモノの中には資産として計上されていて、費用に入っていないモノがあります。
その代表的なモノが、
使用済み核燃料
です。
使用済み核燃料というのは使い終わった後の燃料棒です。
燃料棒だってタダじゃ無いです。
手に入れるためには莫大なおカネがかかるんです。
かかるんですが、上記の通り、会計という制度の中で、費用に計上されません。
東京電力の資産なんですね。
費用に計上されないということは、その決算の数字を見て、
「あ〜なるほど〜、原発ってコストが少なくて済むんだな〜。」
なんて言う人が出てくるんですよ。
実際にはおカネがかかってるんですけどね。
そりゃ、使用済み核燃料が後で高く売れるならいいですよ。
例えば100万円で買った土地が100万円とか200万円で売れるのなら問題無いです。
でも、使用済み核燃料なんて、その処理だけでも莫大なコストがかかる厄介モノですよ。
高く売れる気配は今のところ無いですねえ。
まあ未処理のまま放置しておけば、いつまでも費用として計上されないので、原発は安い!と言いたい人には都合がいいんですが。
でもそんなのは問題の先送りですよね。
わかってもらえたでしょうか、原発のコストの問題。
物事は多方面から見ること
世の中には黒字でも倒産する企業もあります。
それは、いくら会計の決算は黒字でも、製品を売った先の企業が倒産などで、実際におカネが支払われないことがあるからです。
数字だけ黒字で、実際のおカネは無いので資金繰りが不足して倒産するのです。
会計は企業の業績を知るための大切な制度ですが、企業の実態を知るための「ひとつ」の側面に過ぎません。
実際には会計だけではわからない数字もあるのです。
これは別に会計制度が悪いという話ではなく、物事の一面だけで判断するのは誤りのモトですよ、という話です。
他には、震災時の賠償金などのコストも想定されていませんし、そういう意味では原発のコスト計算というのは、慎重に慎重を期すべきなのですよ。
これがボクが原発推進派の意見を素直に支持できない理由のひとつです。
いずれ、原発反対派の意見の誤りも指摘してみましょうか。
なお、話を簡略化するために金利や手数料や減価償却や課税の話などは省略しましたが本質からはズレません。
会計に興味がある人はどうぞ勉強して下さい。
会計を深く理解している人は、きっと将来、会社で出世しますよ〜。
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