傾いたマンションのツラい問題
旭化成建材とか三井住友建設とか三井不動産とかでおなじみになった、基礎の柱の長さが足りない、あのマンション。
傾いています。
住民の方々、ホントにお気の毒です。
傾いていることがもちろん大問題なんですが、法的にとてもツラい点があるんですよね。
ボクはいくつかの資格を持っていますが、そのひとつがマンション管理士。
「しのごの言わずに建て替えろ!」
受験前に、こういう語呂合わせで覚えたんですよ。
ああいう区分所有マンションを建て替えるには、区分所有者の5分の4以上の賛成が必要なんです。
例えば、10戸のマンションが1棟建っているなら、それを建て替えるには、8戸の所有者が賛成すればOK。
マンションの状態
でも、問題のマンションは、実はこの図のようになっています。
建物の形とか並び方とか色は実物と全然違うので気にしないでください。
絵のセンスが悪いのも気にしないでください。
今回、問題になっているのはA棟とします。
もしこのA棟だけなら、まだマシなんです。
なぜなら、A棟の各戸の所有者の5分の4以上が賛成すれば建て替えられるからです。費用はもちろん三井不動産負担で。
でも、上の図のように、他の3棟とつながってしまってるんです。
すると、法的には、この4つでひとつのマンションだと見なされてしまいます。
つまり、建て替えには、この4棟全体の5分の4以上の賛成が必要です。
B棟やC棟やD棟は何の問題も無いわけですから、それらの区分所有者は建て替えに賛成するはずもありません。
てことは、仮にA棟の全員が建て替えを希望しても、B棟C棟D棟の人たちが反対するので阻止されてしまうんです。
問題のあるA棟の人たちの希望が、何の問題も無い他の棟の人たちによって否定されちゃうんですよね。
もちろんB棟C棟D棟の人たちは何も悪くありません。自分のマンションはおかしくないんですから建て替えないのは当たり前です。
こうなると、いくら三井不動産が建て替え費用を負担すると言っても、そもそも建て替えが実現できません。
建て替えができなければA棟の人たちは他の場所へ出て行くしかなくなります。
いくら金銭的な補償がなされても、通勤通学コミュニティなどが変わってしまいます。
もちろんA棟の中でも建て替え賛成派と反対派がいるとは思うんですが、上記の問題はまったく別の話です。
A棟の中だけの話なら時間を掛けて解決に向かうかも知れませんが、4棟になると、たぶん永遠に建て替えは決まりません(遠い将来、老朽化したときは別ですが)。
人を救うのが政治
それもこれも法律がそうなっちゃってるからなんですよね。
でも仮に法改正が行われて、つながっているマンションは別の棟とみなすなんて話になっても、それが過去にさかのぼって適用されるかどうかは微妙ですよね。
でもしょせんは人間が決めるだけのこと。
こういうのを救済するのが政治だと思うんですけどね。
あ、そう言えば今月11月29日はマンション管理士試験。受験生のみなさん、がんばって〜。