空室率の上昇
今日はこの記事。
まあ人によって安倍政権に賛同する人もいるし非難する人もいるし、それは個人の信条・主義・主張の問題であって自由です。
この記事では批判的な立場をとっていますね。
実は大都市圏では賃貸住宅の空室率が上がってるんです。
つまり、空室が増えてきているんです。
大家さん、困りますよね。
この記事の中で触れられているのはアベノミクスによる景気対策と人口減少です。
空室率の拡大に関してはもっと重要なポイントがあるんですよね。
その前にちょっとお勉強。
相続税。知ってますよね。どなたかがお亡くなりになれば、その子、孫、親、祖父母、兄弟などが遺産を相続します。
その額が一定以上であれば税金を取られるんです。
相続税がかかるのは、思いっきりざっくり言うと全体の5%くらいですかね。
たぶん、ボクの家系では無縁だと思いますし、世の中の大半の家系でも無縁のはず。
ある程度の資産家しか相続税はかかりませんから。
で、実際に相続税がかかる家もしくはかかると予想される家では、あらかじめ税金対策するわけですよ。
相続税対策ってやつです。
実際は相続の問題は税金だけじゃなくて、跡継ぎの問題やらいろいろ出てくるので、それらの対策も含めれば、相続税対策というよりも相続対策と言っても良いですね。
で、相続税に関しては、あらかじめ対策しておけば、税額を減らすことが可能な場合も多いんです。
相続税ってわりとお高いので、例えば、相続税を払うために先祖代々から伝わった土地を売ってどこかへ引っ越さなきゃならない、なんてこともあります。
相続税は資産の多い人にかかるんですが、資産というのはおカネだけじゃありません。むしろ不動産の方が金額的には大きかったりします。
なので、例えば先祖代々、東京の山手線の内側に住んでいる普通のサラリーマンの人なら、おカネは大して持っていないけど、その自宅の土地の価値が尋常じゃないくらい値上がりしてしまっているケースがあるんですよ。
すると、高額な相続税が発生します。
おカネ持ちじゃない普通の人なのに、たまたまそこに生まれたために発生する巨大な相続税。
何も対策しなければ、土地を売るしか無いんですよ。あるいは物納と言って土地をおカネの代わりに納めるか。まあどっちにせよ、出て行くことになりますね。
そこで、相続税対策の登場。
いろいろあるんですが、たぶん一番有名なのが、不動産の評価額を下げようという対策。
不動産の価値が高ければ資産価値が高くなるので相続税がかかるんですが、不動産の価値と言っても実際に売買される金額じゃないんですよ。
というか、例えばさっきの先祖代々の土地なんてそもそも売買なんてされてないんで、価格なんてわかりませんよね。
その人が1億円で売っていいと思えば1億円だし、誰かが10億円で買いましょうと言えば10億円だし。
つまり、だいたいの周辺の取引の相場感はあっても、実際の対象の不動産の価格なんて決まらないんです。売買しない限り。
でもそれだと相続税を決められません。
だから国がその不動産の価値を決めちゃうんです。
それを評価額と言います。
評価額に対して相続税がかかるんです。
てことは、評価額が下がるようにしてしまえば、相続税も減らせます。
例えば、
- 正方形で目の前に道路が接している1000平方メートルの土地
- 短辺が10メートル、長辺が100メートルの長方形で、短辺に道路が接している1000平方メートルの土地
前者と後者、どっちが使いやすいですか。
そりゃ、前者です。同じ面積でも後者はとんでもなく細長い。建物も建てにくいし活用しにくいですよね。
すると、前者の方が評価額は高くなります。
逆に言えば、後者の方が相続税が安いんです。
もちろん、場所が同じという前提条件の上ですが。
基本的な考え方は、自由に使いやすい土地は価値つまり評価が高く、不自由な土地は評価が低くなります。
では、相続対策ではどうするか。
不自由な土地にしてしまえばいいんです。
その一番有名な方法は、その土地に賃貸アパートを建てるという方法です。
賃貸アパートを建てて部屋を人に貸してしまえば、借家人がそこを使う権利が発生するので、地主と言えども自由に使えなくなります。
そうすると、その土地の評価額がドーンと下がるんですよ。
しかもアパートを建設するときに金融機関からローン借り入れを行います。
借り入れは負債なので、資産から減らすことができるんですね。
資産が減るので相続税額も減ります。
さらに賃貸アパートに人が住めば、家賃収入が入ってくるじゃないですか。
仮にローンを組んだとしても、毎月の返済額よりも家賃収入が上回れば、生活費の足しになりますよね(もちろん他の経費もかかりますが)。
日本は国土が狭い国なので、無駄に土地を使っている人にはペナルティを課すような税制になっています。
逆に、このように賃貸アパートを建てて人がたくさん暮らせるような土地の有効活用をすれば、税金を減らしてあげようという仕組みになってるんです。
こうやって、相続税が発生しそうな家系の人たちは、その人が亡くなる前にあらかじめ賃貸アパートを建てて相続税対策をしておくのです。
日本中にたくさんある賃貸アパートはだいたいそう言う事情で建てられていると思ってください。
税法の改正
で、ここからが問題。
2015年から相続税法が改正されて、相続税がかかる基準が引き下げられてしまったんです。
国におカネが無いから、もっと税金を取ろうってことです。
しかし、そうなると、より多くの人が相続税がかかることになるため、より多くの人が相続税対策、つまり、賃貸アパート建設を行ってしまったんです。
ここで答え。
そう言うことで、人口減少にもかかわらず賃貸アパートはどんどん増え、その結果、空室が増えてるんですね。
だからと言って、自分の家系は相続税対策をしないと巨額の相続税を取られて生活ができなくなるんですから、対策をしないわけにもいかない。
少子高齢化が進んで、戸建ての空き家が増えているのが問題になっています。
そして今、相続税対策による賃貸アパートの増加で空室率も上昇。
空室率が上昇して家賃収入が減ってローンが払えなければ、結局その家系はその土地を手放さざるをえなくなります。
さあみなさん、良いアイデアはありますか?
不動産業界にいるボクが言うのもアレですが、ボクなんかはそれで良いと思っています。
資本主義が進んで格差が広がっている中で、相続税って格差を小さくするための制度なんですよ。
だって、資産家から大きな税金を取るんですから。
だから、格差是正のため、ボクはこの状態を歓迎なんですよ。
ボク自身が資産家じゃないので、こんなことを言えるのかもしれませんが。
2年前に書いてました。