本が当選
たぶんボクが20歳のときです。
自宅に若い女性から電話が掛かってきました。
当時ボクは実家住まいで、まだ携帯電話は存在していませんでした。
電話に出ると、なにやら当選したのでおめでとうという告知。
当選したのは当時のベストセラー本、
「プロ野球を10倍楽しく見る方法」
のサイン本。サインはもちろん著者の江本孟紀氏。
ボクは別に江本孟紀氏のファンでも無かったんですが、とりあえず受け取りに行くことにしました。
ボクの当時の実家は奈良県。
受け取り場所は大阪梅田。
近鉄電車とJR環状線を乗り継いで取りに行きました。
遠くまではるばると思われるかもしれませんが、その頃ボクは毎日、奈良の実家から大阪の豊中市にある大学へ通っていたので定期券を持っていて、いつもの慣れたルートでした。
涙
現場はとあるオフィスビル。そんなに大きくもない、よくある普通のビルでした。
わりと若いお姉さんが待っていました。
年齢はおそらく20代。容姿端麗という感じでは無く、どちらかと言えば「ケバい」女性でした。金髪に近い茶髪。
狭い部屋に通され、約束通り本を受け取りました。
それで終わりかと思ったんですが、そんなはずも無く。
ボクはまだ若かったので知識が無かったんですが、そういうエサで呼んでおいて高額な商品を売るのが本来の目的なんですね。
今考えればわかりやすい手法ですが、当時のボクには意外でした。
進められたのは教材ビデオ。
当時のビデオは今のようなブルーレイディスクとかDVDではなく、ビデオテープです。
中身は、
- 英語学習
- ビジネスマナー講座
- 手品講座
まもなく大学を卒業して社会人になるボクにとって、英語は必須、ビジネスマナー講座も必須、そして様々な人との付き合いの中で宴会もあるので、宴会芸も必須というわけで手品講座だそうです。
この教材の価格が何と40万円。
しかもクレジットローンで支払っていくので金利込みでトータルの支払額は60万円。
確か3年ローンだったと思います。
学生だったボクには大きな金額でした。
特典として、メンバーズカードがもらえるとのことでした。
そのメンバーは様々なサービスや商品を格安で購入できるとのこと。
メンバーズカードは18金でステータスになるという話でした。
にしても、金額が大きすぎて、ボクが悩んでいると、その女性は泣き出しました。
病気の母親を助けるため、九州の熊本県から出てきて、苦労して生活していることを打ち明けられました。
ははは。
今思えば、何という見え透いたストーリー。
でもボクはそこで折れてしまったんですよ。
契約です。
20歳にして60万円のローンを組みました。
後編に続く