北には2種類の定義がある
iPhoneを買ったら最初からインストールされているアプリの一つに「コンパス」があります。
そして一般の人が最も使う機会が少ないアプリの一つかもしれません。
これはiPhone3GS以降の機種に入っています。
iPhone3GSから本体に電子コンパスというハードウェアが搭載されたから可能になったアプリです。
電子コンパスというと本格的な印象を受けますが、磁力で方角を測定するという仕組みは昔ながらのコンパス(方位磁石)となんら変わりません。その向きを単に電子的に読み取っているだけです。
なので、昔ながらのコンパスと同じように磁気の影響を受けますから、場所によっては正確な方位を測定できません。
しかしデジタル機器ならではの特徴備えています。
それは真北と磁北の表示切り替えができることです。
真北というのは地球が自転している地軸の北の中心です。いわゆる北極点と呼ばれる場所です。
そこを中心に地球は回っています。
地軸をずーっと伸ばした先には北極星があります。
いっぽうの磁北というのは方位磁石が指す北の事を言います。
真北と磁北が一致していればややこしくはなかったんですが、実はズレています。
コンパスというのは磁気に応じて向きますから、当然、真北ではなく磁北を指します。
そのため従来のコンパスは磁北しか知ることができませんでした。
真北を知るためにはコンパスを使わずに、例えば正午に影の向きを見るなどする必要があります。
日本は北半球にありますから、正午(つまり太陽が一番高い位置)に来たときには太陽は真南、逆に影は真北を向くわけです。
この真北とコンパスが指す磁北とは別の方向なわけですね。
だからコンパス(方位磁石)を見ながら北を目指すと、地図上の北の方角とは厳密にはズレた方向に行ってしまうわけです。
ところがiPhoneに搭載されている電子コンパスは、磁北だけではなく真北も表示することができます。
もしかしたら真北を感知するセンサーが発明されたのでしょうか?
いやいや違います。
最初にも書きましたが電子コンパスでもやはり磁力で磁北を指す事には変わりありません。
ではどうやって真北を表示しているのでしょうか?
次のイラストを見てください。二つの位置の違うモノを見るとき、それらのモノからの距離によって見える誤差が変わりますよね?
イラストにあるように、距離が近ければ誤差(つまり角度)は大きくなりますし、距離が遠くなるほど誤差は小さくなります。
これを利用します。
つまり現在地がわかれば、そこと磁北との距離もわかるわけですから、その距離に応じて角度を補正すれば、真北を示すことができます。
iPhoneのコンパスで真北を示すときは、まずは電子コンパスで磁北を測定し、さらにGPS機能で現在地も測定し、それらの位置関係から真北の方向を計算しているわけです。
決して真北を測定するセンサーが発明されたわけではありません。
もちろん従来のコンパス(方位磁石)であっても、現在地さえわかれば、人間が手元で計算することによって真北を割り出すことはできますが、とても手間と時間がかかります。
それをiPhoneのようなコンピューターは一瞬で行ってしまいます。
こんなささいなアプリにもテクノロジーと人間の発想が活かされているわけです。
普段、街の中などを歩いているときに東西南北を知りたい場合は、磁力の向きでは無く、実際の地理的な東西南北を知る必要がありますよね。
従来のコンパス(方位磁石)ではそれを知ることができませんでしたが、iPhoneのコンパスではそれを簡単に知ることができるわけです。
普段、出番がなかなか無い「コンパス」アプリのために、あえて長々と記事を書いてみました。
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真北
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