電話回線とネット回線の違い
ボクは1995年1月の阪神大震災の時は被災地である兵庫県宝塚市に住んでいて震度7の揺れと街の壊滅を経験しました。
その後、東京に移り住み、今年の3月の東日本大震災は震度5強を経験しました。
前回の大震災と今回の大震災で大きく違ったと感じるのは情報通信網です。
阪神大震災の時は携帯電話はほとんど普及しておらず、インターネットもごく一部の人が使い始めたばかりでした。
現在のような携帯電話の買い取り制度(個人個人が携帯電話を持つことができる制度)が前年の1994年に始まったばかりですし、インターネットの普及を後押ししたWindows95の発売は95年の後半、つまり震災後でした。
当然、大震災が起こってもすぐには情報は伝達せず、同じ関西の奈良県に住むボクの両親も、その日は何も知らずにいつもどおり仕事に出かけていたくらいです。
情報はテレビやラジオでしか得られませんでしたが、そういったマスコミは取材を行ってから初めて報道に至るので、どうしてもタイムラグがあります。
一方、今年の東日本大震災。携帯電話とインターネットはほぼ隅々まで行き渡っています。
マスコミが取材をするまでも無く、現地の状況は即時インターネット経由で送られてきます。
もちろん携帯電話で連絡を取り合った人も多いでしょう。
ここで情報の伝わりやすさに違いがあったのを知っていますか?
震災時には携帯電話はつながりにくい一方で、twitterなどインターネットでの情報伝達はほぼリアルタイムでした。
twitterも多くの人は携帯電話やスマートフォン、つまり同じ携帯電話の電波を使っているはずですよね。
なのになぜ通話はつながりにくくてインターネットはつながりやすいのか。
今回はそれを説明します。
いつもどおり初心者向けに簡略化して書きますので、専門家の方は読み飛ばして頂き、細かいツッコミは無しということで。
実は、携帯電話の電波には次の2種類の道があると思ってください。
- 音声通話用の経路
- パケット通信用の経路(インターネット用の経路)
まず、音声通話用の経路について。音声通話用ですから、普通に誰かにダイヤルして会話をするための経路です。
この音声通話用の経路というのは誰かが使っていると他の人は使えないようになっています。
道路を思い浮かべてください。次の図のようなイメージです。
この彼氏と彼女が長電話であれば、他の人たちはずっと待たされて通話ができないんですよね。
もちろん道路は1本だけではありませんが、全員の分は用意されていないので、震災などでたくさんの人が通話をしてしまうと、その間は他の多くの人は電話を使えません。
例えば電話を掛けたい人が100人いるとして道路が30本しか無ければ、残りの70人は待ちぼうけを食らうわけです。
では同じ携帯電話の電波を使うはずのtwitterなどのインターネット通信はどうなってるのでしょうか。
さっき書いたように携帯電話の電波には2種類の経路があり、インターネットでは音声通話用では無く、パケット通信用の経路を使います。
なので、誰かが通話中でも関係なく使えるわけです。
「ちょっと待て!パケット通信用の経路だって数は限られてるんじゃないのかコノヤロー。」
と思ったあなた、すばらしい。
そうです。そういう疑問がわいて当然です。
でも実際にはインターネットの通信では待ちぼうけというのは起きにくいのです。
震災の時にも、電話はかからないのに、twitterは出来たという人が多いのです。
その理由を書きます。
実はすでに書いてるんですけどね。
次の図を見てください。
Aさんは「メシ食べよう」
Bさんは「こんにちは」
Cさんは「背中かゆい」
というメッセージを相手に送りたいとします。この場合、次の図のようにメッセージを1文字ずつ分解して交互に送ります。
こうすることでAさんがインターネットで通信している間にBさんやCさんが待ちぼうけを食らうと言うことが無くなります。
最後には次の図のように分解された文字が再びきちんと並べられて相手にメッセージが届きます。
音声の通話のように誰かが道路を占拠してしまうことはありません。
だからインターネットの通信はつながりやすいのです。
厳密にはこのように交互にデータを送っていますから、全員がまったく同時というわけではありませんが、通信というのはものすごい速さで行われるので、利用者はデータがバラバラに分解されていることには気がつきません。
この一文字一文字のデータのことを「パケット」と読んでいます。
パケットは別に文字だけでは無く、画像なども同様です。とにかくデータを細かく切り刻みます。
最近、Skypeなど、インターネット電話と呼ばれる物が普及していますが、それもこのパケット通信を使っています。
Skypeでは音声のデータを細かく切り刻んでインターネット回線で送っています。
なので通常の携帯電話の通話用の回線が混んでいるときでも、Skypeで音声通話できてしまうわけです。
また、最近はスマートフォンの普及でパケット定額制(インターネット通信をいくら行っても通信料金は一定のまま)に加入している人も多いでしょう。
それでも電話をかければパケット定額料金とは別に通話料がかかってしまいます。
それは上記の理由なんですね。電話をかけると道路を独占してしまうので、定額のままだとずーーっと道路がふさがったままになってしまう可能性があります。
なので利用時間に応じて料金が上がっていくようにして、あまり長時間使えないようにしています。
パケット通信の方は道路を独占されませんから、そんな心配はいりません。
そんな理由で、いずれ将来は今までの音声通話というものを使う人が減り、代わりにSkypeなどのインターネット電話を使う人が増えると予測されています。
しかし、スマートフォンの急激な増加で、このパケット通信を行う人がものすごく増えてます。
特にソフトバンクはiPhoneが爆発的に普及したおかげで、このパケット通信用の経路がかなり混雑しています。
よく、ソフトバンクは電波が悪いと言われますが、もし仮にソフトバンクの電波がドコモやau並みに良かったとしても、iPhoneユーザーが非常に多いので、やはり通信の混雑(通信速度の低下)は発生すると思います。
スマートフォンはこれまでの普通の携帯電話と比べてパケットを10倍くらい使うと言われているからです。
ただでさえパケットをたくさん使うスマートフォンが使う人の数も増えていくんですから混雑して当然です。
パケット使用量10倍のスマートフォンを使うユーザー数が10倍に増えれば、混雑は100倍ですよね。
そういった混雑を減らす方法は主に2つあります。
一つは道路の本数を増やすこと。
もう一つはパケットを送る速度(通信速度)を上げること。
今は携帯電話各社はこの2つに取り組んでいるので期待しましょう。
いずれにせよ、従来の音声通話というのは、その仕組み上、いくら電波の圏内にいても、震災などの非常時に使えない可能性があります。
なので、いざというときのために、Skypeなどのインターネット電話のアプリやtwitterなどの連絡手段を確保しておいた方が良いと思います。
ボクも友人知人には普段からこの2つを使うようススメています。
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