高齢者の所在確認は高齢者社会の必須かつ難易度の高い問題
最近のニュースで気になること。
100歳をはるかに超える高齢者の方が、実は30年も前に死亡していたというニュース。
こちら。
高齢者の所在不明問題
これに関しては、あちこちで、現代の人間関係の浅さを嘆く声が聞かれます。
死後30年間にわたって年金が支払われ続けてきたという話もあり、もし事実ならば明確な不正受給なわけです。
そこで、
役所は何をやってたんだ!
とお決まりの批判をする人もたくさんいるわけで、政治家も動き始めたようです。
ボクはこの問題はとても難しいと思っています。
すでに死亡している人に年金を支払い続けるということは他の国民にとっては損害になるため、これからはきちんと生存確認をしようという話は当然です。
が、それがどこまで可能か、ということです。
まず、役所はすべての国民の生死をリアルタイムに把握することはできません。
例えば役所の職員数が500人の町があるとして、その町の65歳以上の年金受給対象者が3万人いるとします。
他の全ての仕事をなげうって500人の1割の50人の職員が1軒1軒のお宅を訪問して毎日20軒回っても、1ヶ月。
実際には1割もの職員をそれだけのために使うわけにはいきませんから、全員の所在確認は数ヶ月から1年はかかるでしょう。
となると仮に年金の不正受給が発覚するにしても数ヶ月のタイムラグが発生します。
でも、そもそも一般の人は身内が死亡すれば役所に死亡届を出しますから、そこで死亡が確認できます。
大部分はこれで年金も打ち切りとなり問題ないわけです。
すると逆に言えば、年金を不正に受給しようとするには、本当は死亡しているにもかかわらず死亡届を出さないということを意図的にやることになります。
おそらくそういう人はごく一部でしょうけど、そういう人のせいで、年金受給者全員の所在確認が必要になるわけですから、これは大きなコストです。
しかも不正受給を意図的にするのであれば、もう一つやっかいな問題があります。
それは、仮にお宅を訪問して、本人が出てきたとしても、それが本当に本人なのか?ということです。
例えば、105歳のおじいさんの所在確認のために訪問したところ、実はその人はすでに亡くなっているにもかかわらず、その人の85歳の息子が、
「私が本人です」
と言って出てきても、役所の人は見破れないでしょう。
悲しいかも知れませんが、それが人間の老化というやつです。
悪意のある人が意図的に年金不正受給を企てるのなら、それくらいのことは簡単にできてしまいます。
こうなるとお手上げです。
これを防ぐには全国民からあらかじめ指紋やDNAなどの識別データを取っておくしかありません。
つまり、完全な個人識別情報管理国家への移行です。
ご存じかも知れませんが、老齢年金というのは自分が若いときに積み立てたおカネを老後に受け取ることができるのではありません。そういうのを積み立て方式と言います。
日本は積み立て方式ではなく賦課方式です。賦課方式というのは今の若い人が払ったお金を今の老人が受け取る年金の方式です。
つまり、若いあなたが納めている年金保険料は積み立てられているわけではなく、すぐに今の老人に支払われて消えていっているわけです。
あなたが将来、老人になっても、あなたが納め続けたおカネはとっくに無くなっていて、その将来にいる若者が納める年金保険料を受け取るわけです。
なので、高齢化が進んで若い人が減ると、とても苦しくなるわけです。
年金不正受給をある程度防ぐには賦課方式ではなく積み立て方式にして、自分の取り分は自分が積み立てた額で決まる、という方が効果があります。また積み立て方式であれば少子高齢化でも年金の破綻を防ぐことができます。
日本は世界の歴史上、類を見ない、つまり人類が経験したことのない少子高齢化の国家になっていきます。これは賦課方式の年金の破綻を意味します。
国をひっくり返すくらいの大手術を行って積み立て方式への切り替えが必要だと思います。
思いますが、そのためには、今の老人への年金の財源が必要になります。それをどうするか?
残念ながらボクにもその答えが出せません。
ただし莫大な無駄の削減が必要だということは確かです。
公務員の人件費は国家の税収を超えています。つまり税金だけでは足りなくて、毎年借金をしないと公務員を雇えないわけです。それだけでも異常です。
1億円の売り上げの会社の社員の人件費が1億3000万円。間違いなく潰れます。