非天マザー by B-CHAN

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iPhoneがAndroidに対して持つもうひとつの利点とは

企業が利益を出すとユーザーにもメリットがある


各社から猛烈な勢いでAndroid機が出て、今やAndroidの合計シェアはiPhoneを上回っていると言われています。
ユーザーにとってはシェアなんてどうでもいいやなんて言う人もいるでしょう。
ここで、あまり語られることのないiPhoneのメリットを一つ書いてみます。
それは、iPhoneはAppleが1社で作っているということによります。
Android機はいろんな会社が作っています。確かに各社のAndroid機の販売台数を合計するとiPhoneの販売台数を超えるかもしれません。
しかし、個々の会社ごとの販売台数では、Appleが圧倒的な数を誇っています。
さて、この1社が販売する数が圧倒的に多いとどういうメリットがあるでしょうか。

材料費を考える

モノの製造原価には固定費と呼ばれる部分と変動費と呼ばれる部分があります。
変動費というのはわかりやすく言えば主に材料費です。
例えば1台のiPhoneに材料費が1000円分使われているとします。(話を簡単にするための仮定の数字ですよ)
すると10台のiPhoneを製造したら
材料費総額は1000円×10台=1万円
50台のiPhoneを製造したら
材料費総額は1000円×50台=5万円
500台のiPhoneを製造したら
材料費総額は1000円×500台=50万円・・・[A]
と台数が増えれば増えるほど材料費総額も増えていきますよね。こういう費用を変動費といいます。
じゃあいっぽうの固定費とは何か。
例えばiPhoneを製造するために工場を建てたとします。その工場の建設費は10万円だとします。(安すぎますが話を簡単にするための仮定の数字ですから)
さて、この工場で10台のiPhoneを製造したとしたら、iPhone1台あたりの工場の建設費は
10万円÷10台=1万円
この工場で50台のiPhoneを製造したとしたら、iPhone1台あたりの工場の建設費は
10万円÷50台=2000円
この工場で500台のiPhoneを製造したとしたら、iPhone1台あたりの工場の建設費は
10万円÷500台=200円・・・[B]
となります。工場ひとつだけで作れるなら、iPhoneを10台つくろうが50台つくろうが工場の建設費は10万円で変わりません。何台作っても変わらないので、これを固定費といいます。
さて、Appleはこの工場でiPhoneを500台作って完売しました。
iPhoneの販売価格は1台2000円とします。
すると、価格から製造コストを引けば利益がわかりますよね。
価格2000円 − 変動費1000円[A] − 固定費200円[B] = 800円
これがiPhone1台あたりのAppleの利益です。
それが500台売れたわけですから、Appleが得た利益の合計は、
800円×500台=40万円
となります。
さて、ここでAndroidの方を見てみます。
同じく10万円の工場を建てて、同じ材料費(1台あたり1000円)とします。
販売価格もiPhoneと競争するために同じ2000円とします。
iPhoneと違うのは1社での販売台数がかなり少ないということです。
iPhoneの500台に対してAndroidを作っているこの会社の販売台数は100台です。
ということはこの工場で作ったAndroid機1台あたりの工場の建設費は
10万円÷100台=1000円
つまりAndroid機1台あたりの固定費は1000円になります。
そこで同じように利益計算をしてみましょう。
価格2000円 − 変動費1000円 − 固定費1000円 = 0円
なんと0円になってしまいました。
つまり、この会社はAndroid機を100台売っても儲けが無いわけです。
儲けがなければビジネスが成り立ちません。つまり利益を出す必要があります。
利益を出すためには方法は2つ。
売上高を増やすか費用を減らすかのどちらかです。
売上高を増やすには販売台数を増やせばいいのですがAndroid機の競合ひしめく今のAndroidのマーケットでは簡単に販売台数は増えません。
なので費用を減らす方に注目します。
固定費の方は工場の建設費なのでもはや減らせません。ということは変動費、つまり材料費に着手するしかありません。
要するに材料を安くするのです。1台あたり1000円の材料費を使って作っていましたが、これを800円に減らします。
材料費が1台あたり200円安くなった結果、200円の利益が出るようになりました。
つまり、100台売れて合計2万円の利益を手にできるようになりました。
その代わりに安い材料にしたのでAndroid機の外観も多少安っぽくなってしまいました。
その頃Appleでは、iPhoneの材料費を1台あたり1000円から1500円に引き上げました。
つまりもっと高級なモノを目指したわけです。
その結果どうなったでしょうか。
販売価格は2000円のままです。するとiPhone1台あたりの利益は、
価格2000円 − 変動費1500円 − 固定費200円 = 300円
それが500台売れて、Appleは合計15万円の利益を手にしました。
もう一度おさらいしましょう。
iPhoneのほうはAppleが得た利益は合計15万円で500人のユーザーは1500円の材料費を使った高級な端末を持つことができました。
Androidのほうは会社が得た利益は合計2万円で100人のユーザーは800円の材料費を使ったやや安っぽい端末を持つことになりました。
ここまで来て、わかりましたか?

スケールメリットが発生

iPhoneのメリット。
iPhoneは1社ですべて作っているので製造コストに巨大なスケールメリットが働くのに対して、Androidは各社が作っているので個々のメーカーにはスケールメリットは小さい。
その結果、iPhoneには贅沢な材料を使うことができユーザーの満足度が上がりながらもAppleも大きな利益を得ることができる。
AndroidにはスケールメリットがiPhoneほど無いので利益を出すためには材料費を削ることになるが、端末の材料が安いのでユーザーの満足度も下がり、しかもメーカーもあまり儲からない。
勘違いしないで欲しいのは、iPhoneやAndroidのどちらが優れているという話とは全く関係ないということです。
あくまでも現在のiPhoneのマーケットとAndroidのマーケットの規模と構造を考慮して、製造原価から算出したメーカー側の利益と、端末1台に使える製造コストの比較をしたというお話です。
当たり前のことですが、スケールメリットが非常に大きなiPhoneには材料や開発費などの製造コストにもふんだんにおカネをかけることができる(高級な部品を使ったり精密な設計ができる)ので、ユーザーにもメリットが大きい、同じ価格を支払ってもより高級な端末を手に入れることができるということです。
今後もし、Android機メーカーのどれか1社がiPhone並みの台数を販売できるようになれば、この構図も当然に変わってきます。
興味深く見たいと思います。