ネットワーク外部性のある製品のシェア獲得
こんな記事があります。
「女子中高生のiPhone乗換」が進行中、この半年では60%がiPhoneを選択
一般的には商品を買うときには、その商品そのものが優れているとか自分の趣向に合うかどうかということが選択基準になります。
例えば、飲み会で10人中8人がビールを選んだとしても、ビールが苦手な人はカクテルとか他のドリンクを選ぶでしょう。
腕時計を買う人は自分の買いたい腕時計を選ぶでしょう。
Rolexが欲しい人はRolexを、Swatchが欲しい人はSwatchを選ぶと思います。
ところが世の中には、製品そのものの性質が選択のキーにならない現象があります。
ネットワーク外部性と呼ばれる現象です。
昔、家庭用のビデオには大きく二つの規格がありました。
VHSとベータです。
製品そのもので見れば一般的にはベータの方がコンパクトで性能も良いと言われていました。
しかし市場競争ではVHSの圧勝に終わりました。
ビデオというのは単にビデオデッキ本体の性能の良さやテープの性能の良さよりももっと重要な要素があります。
それは他人と交換できるかどうかです。
Aさんが録画したテレビ番組を入れたテープをBさんに貸しても、Bさんの家のビデオデッキで再生できなければ意味がありません。
AさんもBさんも同じ規格の機械を持っていることが大前提です。
もし、自分の周りの人たちがみんなVHSを持っていて、レンタルビデオ店に行ってもVHSの作品ばかりだとしたら、本当にベータの方が性能が良いとしても、ベータのデッキを買う人はほとんどいないでしょう。
同じような現象はパソコンにも見られます。
90%前後のパソコンにはWindowsが入っています。
ごく一部に熱狂的なMacファンの人たちがいて、彼らはMacの画面の美しさや操作性に惚れています。
一方でWindowsは一般的には画面が美しいとか操作性が優れているという理由で選ばれることは少ないと思います。
大半の人は、周りみんながWindowsユーザーだから自分もWindowsを選んだという事だと思います。
周りと同じようにWindowsを選んでおけばWordやExcelなどのデータのやり取りも問題無く行えます。
こんなふうに、商品単体の性能では無く、周りの環境に影響を受けている現象をネットワーク外部性が生じていると言います。
冒頭に貼ったiPhoneの記事。
iPhoneって元々はその優れた操作性がもてはやされて大ヒットに至っているわけですが、今や周りがiPhoneユーザーだらけになってしまい、もはやiPhoneが優れているからという理由よりも、周りの人が使っているからと言う理由で買っている人が増えているということです。
冒頭の記事ではデータの母数が少ないので断定的な事は言えませんが、そういった人が増えているのは間違い無いと思います。
これはまさにiPhoneのWindows化です。
製品そのものの性能に惚れて買うのでは無く、周りに影響されての受動的な理由なので、ボクはちょっと残念な気がしますが、逆に、受動的な理由で買ったにも関わらず、iPhoneの美しいユーザーインターフェースを目の当たりにして結果的に惚れ込むユーザーもいるんだろうなと思うと、それはそれでおもしろいですね。
まだ未体験の皆さん、従来の携帯電話の常識を覆すiPhoneのユーザーインターフェースをぜひ体験してみてください。
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