経営の観点で考えると、物事を理論的に考えられ、人助けにつながる事もある
前回は、プロのデザイナーの事を思って批判したら、かえってプロのデザイナーの首を絞めてしまった事例について書きました。
無報酬でのデザイナー募集を批判することは、かえってプロデザイナーを苦しめることに気付いていますか?
良かれと思った行動がかえって首を絞めることになる事例がここにもひとつあります。
それは最低賃金制度です。
国民の生活を守るために最低賃金というものが決められています。
雇用者は人を雇うときは最低賃金以上の給料で雇わなければいけないという法律です。
某政権が、その最低賃金を引き上げようとしました。
最低賃金が上がれば給料が良くなるので国民の生活が良くなる、という触れ込みです。
しかし、よく考えてみてください。
話を簡単にするためにわかりやすい数字で書くのでご了承ください。また給料と賃金をここでは同じ意味で書きます。
例えば、ある企業の月の売上高が220万円だとします。
従業員が10人いて一人あたりの月給が20万円だとすれば給料の合計は200万円ですよね。
他に何もコストが無いと仮定すれば、売上が220万円で給料が200万円なので黒字です。
ここで国民を守るために政権が最低賃金を引き上げたとします。結果、企業は月給を最低25万円にする必要が出たとします。
これでみんな給料が上がってハッピー!となりますか?
給料が上がったからと言って企業の売上高が上がるわけではありません。
売上高220万円の企業の従業員の給料が250万円になれば当然倒産します。
倒産せずに企業を維持して、かつ最低25万円の賃金を守るためには、8人しか雇えなくなります。
つまり失業者が2名出ます。
今までは全員が20万円の給料をもらえていたのに、法律が変わったおかげで、2名は給料ゼロです。
これまでは全員がなんとか暮らせていたのに、最低賃金が上がったことで二人は生きていけなくなりました。
また、企業側でもこれまで10人でやっていた仕事を8人でやる必要があり、労働時間が増えたり、労働環境が悪化します。
もちろん労働時間が増えても売上高が増えない以上、残業代を払えず、また払ったとしたら倒産で、結局全員が失業します。
サラリーマンしか経験した事が無い人は、会社から仕事を与えてもらって毎月自動的に給料を与えてもらうという生活なので、なかなかこういう視点にはなりにくいです。
でも実際にはサラリーマンが働いている企業というものはすべて、売上高からコストを差し引いた結果が黒字で無ければ存続できません。
そして企業経営にとって売上高を増加させるというのは本当に難易度が高いことなのです。
サラリーマンを辞めて自分が経営するようになれば、いかに経営が難しいか(逆に言えば、いかにサラリーマンが楽で恵まれているか)が実感できます。
企業経営に関する法律を改正(改悪?)するときには、目先の数字の上下では無く、経営に関する視点で論理的に考えないと、不利益を被ることがある、ということです。
今回は、最低賃金制度を例に出しましたが、世の中にはそんな事例があふれています。
前回も書きましたが、目先の出来事に反射的に怒ったり批判するのでは無く、きちんと論理的に考えてみてください。
そうしないと、良かれと思ってやってることが、かえって世の中を悪化させ、人を苦しめることにもつながる可能性があります。