数と率
物事のリスクを推し量るのに、実数だけではダメで、率も考える必要があります。
例えば新型コロナウイルスの感染者数は東京都が最も多いんですが、それは東京都の人口が多いからであり、単に実数だけを見て危険度はわかりません。
そこで、率も見る必要があります。
それを書いてくれているのが、プレジデントのこの記事。
これを見ると、人口10万人あたりの感染「率」では福井県が1位です。
なるほど。おっしゃるとおり。
実数とともに率も見ないと、ホントのリスクは読めません。
そして、それを元に、冒頭にこんな一文があります。
感染リスクから逃れるために東京脱出を図るのは合理的な行動とはいえない
感染リスクから逃れようとしても、東京より福井の方が感染率は高いから東京から福井へ逃げるのは合理的では無いわけですね。
なるほど。
と思ったあなたは、重要なもう一点を見落としています。
もしかしたら、上記の記事を書いた方も見落としているのかもしれません。
それを説明します。
面積
それは、面積です。
福井県の面積は約4190平方キロメートル。
東京都の面積は約2104平方キロメートル。
そうです。福井県の面積は東京都の約2倍です。
感染者数は東京都が891人。福井県が53人。
感染者人口密度が全然違うのです。
東京都の感染者人口密度を変えずに面積を2倍にすると感染者数は1782人。
つまり、同じ面積で、福井県では53人、東京都では1782人の感染者がいるコトになります。
確かに、感染率では福井県が1位です。
10万人あたりの感染率は福井県が6.7人、東京都が6.5人。
数だけを見れば東京都の感染者が多いです。
率だけを見れば福井県の感染率が高いです。
では、感染リスクを逃れるために東京から福井県に行くのは合理的では無いのでしょうか。
ここで、感染者人口密度が出てきます。
同じ面積に、東京なら1782人、福井なら53人の感染者がいます。
東京の感染者人口密度は福井県の33倍以上です。
こう考えればわかりやすいでしょう。
A室とB室と言う同じ面積の2つの部屋があります。
A室の感染率は6.5%。
B室の感染率は6.7%。
どちらかに入るとして、少しでも感染率が低いA室に入ってみたら、感染者が33人いた。
B室には感染者が1人だけ。
ボクなら、感染率は低くても感染者が33人もいるA室(東京都)よりも、感染率が高くても感染者が1人しかいないB室(福井県)を選ぶでしょう。
あなたもそうすると思いませんか?
つまり、実数と率の両方で検証する上記の記事の考え方は、ほぼすべて正しいと思いますが、たった一箇所、
感染リスクから逃れるために東京脱出を図るのは合理的な行動とはいえない
と言う部分のみ、ボクは同意できないですね。
感染率は福井県が高いけれど、面積が広くて実数も少ない福井県にいる方が感染者と接触する確率が圧倒的に低いからです。
面積・人口密度と言う要素が抜け落ちているんですね。
と言うわけで、ボクの結論は、
感染リスクから逃れるために東京脱出を図るのは合理的と言える
です。
ただし最後に注意しておきます。
ボクは東京脱出を推奨しているわけではありません。
なぜなら、上記には、
「感染リスクから逃れるために」
と言う前提が付いています。
感染リスクから逃れるためなら、ボクが言うように、東京から脱出する方が合理的であり、この点に関してはプレジデントの記事と異なる点ですが、東京から脱出するコトで、感染エリアを拡大させてしまうと言う別のリスクがあります。
つまり、脱出した人がすでに感染しているケースですね。
だから、ホントの結論。
「感染リスクから逃れるために」東京脱出を図るのは合理的と言える
けれど、
「感染拡大を防ぐために」東京脱出を図らない方が良い
です。
以上、プレジデントの記事の内容には概ね同意、一箇所だけ不同意。
きちんと理解できたでしょうか。