チケット譲渡
フィギュアスケートのイベントで父親からチケットをもらった大学生の女性が入場できなかったそうです。
記事がいつまでも残るとは限らないので、引用させてもらいます。
チケットを手に途方に暮れる道南の大学生の女性がいた。40代の父親から「親名義で購入したため、娘は本人確認で入場を認めてもらえなかった。厳しすぎないか」と訴える封書が特報班に届いた。
会場でスタッフがチケットの購入者名と運営側の名簿を照合。父親名義のチケットの女性は「本人ではないのでダメです」と伝えられた。学生証に加え、自身と父親の氏名が記載された健康保険証を提示しても結果は変わらず、道南の自宅に帰るしかなかった。
連盟は「ファンから転売対策を望む声が寄せられたため、ルールを厳格にした」と説明するが、跡見学園女子大(東京)の曽田修司教授=アーツ・マネジメント=は「不正転売でない以上、主催者は配慮が必要だったのでは」と指摘する。
要するに、お父さんが大学生の娘のために申し込んで買ったチケットを娘が会場に持って行き、学生証や保険証を見せても入れてもらえなかった、と。
世の中では不正転売が問題になっています。
だから日本スケート連盟はチケット不正転売禁止法に基づき、徹底的に厳格に断ったわけです。
それに対して世論は分かれました。
でも、よく考えたら、日本スケート連盟の対応は明確におかしいのです。
それは単に、この女性が気の毒と言う感情論では無く、きちんろ論理的に説明できます。
物事を本質で考えられない人たち
そもそも、不正転売が禁止なのは目的があるからです。
不正転売が行われると、チケットを不当に買い占めて高値で売られるようになります。
つまり、本来のファンでも無い人が、カネ儲けをできる一方で、本来のファンは正価のチケットが手に入らず、高くなったチケットを買わざるを得ません。
よって、不正転売を禁止する理由は、
チケットの高騰から本来のファンを守るコト
なのです。
これ、大切なので、頭に置いておきましょうね。
もう一度書きます。
チケットの高騰から本来のファンを守るコト
これが目的です。
そのための手段として、転売禁止とするわけです。
ところが日本スケート連盟が採った対応は、入場禁止。
まず、チケット不正転売禁止法は、チケットの不正転売を禁止する法律です。
親が子のためにチケットを買ってあげるコトは不正転売でしょうか?
まったく違います。
この時点で間違いは明白です。
しかし、何を思ったのか、不正転売だとみなして厳格に断りました。
何が何でも転売禁止と言う目的を達成する。
そうです。
日本スケート連盟は転売禁止を目的化してしまったんですね。
さっき書いたとおり、ファンを守るのが目的であり、転売禁止はその手段です。
目的を変えてしまうコトは問題ですが、目的を達成するために柔軟に手段を運用するコトは何ら問題ありません。
どの道を通っても時間どおりに目的地にたどり着くのは問題無いんです。
渋滞が発生すれば別のルートを通っていけばいいんです。
大切なのは目的であり、手段ではありません。
ところが日本スケート連盟は、別のルートを通りませんでした。
最初のルートを通るコトを目的化してしまったからです。
手段の目的化です。世の中でよくある間違いです。
その結果、ファンが犠牲になりました。
ルートを死守するために、まさに、大事な大事な目的が、ないがしろにされたわけです。
目的地が変わってしまったんです。
親子間であるコトが明確にわかっているのだから、日本スケート連盟はきちんと、ファンを守ると言う目的を達成すべきでした。
その結果、演技を見てもらえるお客さんを選手はひとり失いました。
お客さんは演技を見られませんでした。
誰もトクしないのです。
Win-Winの逆ですね。Lose-Loseです。
選手もお客さんも不幸。
すると、
「保険証を偽造する人間がいたらどうするんだ!」
と言う人がいるんです。
呆れますねえ。少しは頭を働かせましょうよ。
ほんの少し考えればわかるコトですよ。
不正転売と言うのは、チケットを買い占めて高く売るコトで利益を得たいわけですよね。
でも、保険証を偽造すると言うコトは、その不正販売者の保険証を相手にコピーさせないと成り立たないわけです。
どこの不正転売者が自分の保険証を見ず知らずの相手にコピーさせますか?
それをするメリットは何もありません。リスクだけです。
なので、不正転売での保険証偽造は発生しません。
いや、不正転売者では無く、買い手の方が保険証を偽造するのでは?
と言いたいあなた。
それもおかしいですよね。
わざわざ高値でもチケットを買いたい人は熱心なファンですよ。
不正転売者は不正な人ですが、買い手は一般の人です。
一般人がわざわざ売り手の保険証を偽造しますか?
考えてください。
偽造をする必要があるのは売り手では無く買い手なのですよ。
さっきも書いたように、売り手は自分の保険証のコピーなんて危険すぎて渡しません。
その状態で普通の人である買い手が売り手の保険証の偽造をやる可能性があると思いますか?
おかしいですよね。
それでも、限りなくゼロに近い確率ですが、誰かが保険証を偽造したとしましょう。
では、その限りなくゼロに近い人間の入場を防ぐために、すべてのチケット譲受人を入口でブロックすべきでしょうか。
前者はほとんどゼロ。後者は家族間の譲渡なので、何人かは存在するでしょう。
前者を防ぐために後者も全員ブロック。意味がありませんよね。
ここで目的を思い出しましょう。
チケット価格の高騰からファンを守るのが目的でした。
ごくごくゼロに近い数の人間が何とかして保険証を偽造したら、チケット市場は高騰しますか?
しませんよ。
つまり、チケットを偽造した人を見逃してしまっても、ファンに影響は無いのです。
逆に、すべてをブロックしてしまうと、本来のファンが犠牲になります。
家族間のチケット譲渡を禁止するコトは、デメリットだけでメリットは何もありません。
選手とファンが不幸になるだけで、幸せになる人は誰もいません。
と言うわけで、入場できなかった人がかわいそう、と言う単なる感情論では無く、きちんと明確に理由を書きました。
不正転売はきちんと取り締まり、そうでは無いモノは許可した方が良いのです。
いや、選手もファンもどうでもいい!とにかく転売禁止と言う「目的」こそが大切なんだと言うのなら、どうぞ、その理由を示してください、日本スケート連盟さん。