賃貸と持ち家の問題
住居に関して、賃貸が良いか、持ち家が良いか、よく議論されますが、はっきり言って、好みの問題なので、正解なんて無いです。
なぜなら、諸条件が入り乱れるからです。
金銭の問題。
引っ越しのしやすさの問題。
品質の問題。
内装の自由度の問題。
要は、どれを最優先させるかは人によって違うので、当然、正解も違ってきます。
なので、今回は、過去に銀行員、現在は不動産管理の仕事をしているボクの独り言として、単純に金銭の話だけをします。
要は、賃貸と持ち家で、金銭面でどちらが有利か、と言う話です。
100%完全に持ち家
先に言っておくと、ボクは引っ越し好きの人生なので、賃貸物件を選択し続けています。
好みの問題です。
では、金銭面で考えればどうでしょうか。
答えを先に言うと、完全に持ち家が有利です。
まず、バランスシート(貸借対照表)の面で考えます。
簿記とか会計の知識がある人にはカンタンな話ですが、要は、価値の交換の話です。
例えば、あなたが5万円でパソコンを買った場合と、5万円を誰かに差し上げた場合とで考えてみましょう。
パソコンを買った場合は、あなたの財産から現金5万円が減少し、その代わりに、5万円のパソコンが増加します。
バランスシートで言えば、左側(資産の部)が入れ替わるだけです。
つまり、バランスシート全体の厚みは変わりません。
一方、5万円を誰かにあげてしまうと、あなたの財産から5万円が減少するだけです。
何も増えません。
バランスシートの左側の現金が減り、全体として厚みも減ります。
ここで考えなきゃならないのは、パソコンの価値は年々、減っていくと言うことです。
なので、パソコンを手に入れたとしても、その価値はやはり減っていきます。
パソコンが限定記念品などでプレミアが付いて、かえって価格が上がる可能性も無いことはないですが、基本的にはモノは減価します。
だったら、結局は、パソコンを買うのも5万円をあげるのも同じじゃないか、と言いたくなるかもしれませんが、確実に言えるのは、5万円を誰かにあげた場合は100%確実に5万円が減価するってことです。
なので、仮にパソコンの価値が下がっていっても、単に現金をあげる場合より損になる可能性は無いわけです。
まあ、パソコンを使うのに電気代やらネット料金がかかりますが、それは別の話なので、ここでは省きます。
会計的に言えば、バランスシートの左側に載ることを「資産計上」と言いますが、すなわち、おカネを出してモノを資産にするってことです。
税制的には5万円のパソコンだと安すぎて、普通は資産にはしませんが、今回は話をカンタンにするため、そんなもんだと思ってください。
持ち家を買うのもまったく同じ理屈です。
賃貸で払った家賃は戻ってきませんし、いくら家賃を払っても、不動産は手に入りません。
一方、家を買えば、おカネが減る代わりに家が手に入ります。
価値の交換ですね。
その点で言えば、さっきのパソコンと同じ理屈。
家の価値も減価する可能性は大いにありますが、最悪でも価値はゼロになるだけなので、その時点で賃貸と並ぶだけです。
でも、家を買うのはほとんどの人がローンを組むので、金利が大きいんだよ!
と言う意見があります。
そうですね。
また、持ち家の場合は、メンテナンスが必要です。
壊れたときの修理代とか。
また、固定資産税などもかかりますよね。
- 金利
- メンテナンス費
- 税金
これらは持ち家に付いてくる費用です。
しかし、ここに落とし穴が!
賃貸でも実は払っている
賃貸の場合は、修繕は大家さんの義務ですし、固定資産税などの税金も大家さんが払います。
賃貸マンションを建設する際のローン金利ももちろん大家さんが払います。
ただし、それは、直接的な話。
すごく当たり前ですが、大家さんは、
賃貸経営
をしているのです。
当然、家賃収入を得ても赤字になるような経営はしません。
つまり、家賃を得て、その中から、修繕費や税金や金利を払っています。
その家賃を出すのは、入居者ですね。
結局、入居者が、その建物の修繕費も、税金も、金利も払っているんですよ、家賃と言う形で。
しかも、さらに、大家さんは経営をしているので、儲けを出す必要があります。
その儲けの分も家賃に含まれます。
ここまで言えば、わかりますよね。
賃貸物件に住んでいる人は、その物件の、
- 金利
- メンテナンス費
- 税金
- 大家さんの儲け
を含んで計算された家賃を負担しているわけです。
持ち家なら、
- 金利
- メンテナンス費
- 税金
を負担し、しかも家が資産として手に入るわけです。
なので、答えは完膚なきまでに決まっていて、金銭面の損得だけで言えば、完璧に持ち家が有利です。
以上が今回の趣旨です。
ただし、最初にも書いたように、住居選びは金銭の問題だけではありません。
引っ越しのしやすさ、震災時の損失の大きさなど、いろんな諸条件があります。
金銭面以外を優先する人もたくさんいて、それは個人の問題です。
例えば、近隣に変な人が住んでいる場合、賃貸なら、こっちが引っ越して逃げやすいですが、持ち家なら、そうカンタンにいきません。
ライフサイクルにおいて、賃貸なら、子供がいる間は広い家、子供が独立したら、そんなに広くない家に引っ越すことで、コストを見直しやすいですね。
ローンを組んだら、その間に失業すれば大問題です。
持ち家に住み続けると老朽化しますが、賃貸なら、数年ごとに新しい物件に引っ越すことができます。
つまり、計算上の金銭の損得で言えば、100%完全に持ち家がオトクですが、リスクや趣向も含めれば、考え方は大きく変わるので、だから、この問題に答えは無いわけです。
ハウスメーカーや売買仲介業者は持ち家をススメますし、賃貸仲介業者は賃貸をススメます。
それが仕事だからです。
いずれも正論ですが、大切なのは、自分が何を考えるか。
ってことですね。