家賃の未払い
ボクの本業のひとつが不動産管理。
やることは多いわけですよ。
その中のひとつが家賃回収の仕事。
賃貸物件に入居している人は、毎月、家賃を払うわけですが、たくさんの戸数を管理していると、当たり前のように毎月、何件かの未回収が発生します。
家賃の支払い方法には、主に、
- 現金持参
- 指定口座への振込
- 口座から引き落とし
があるわけですが、一番便利なのはもちろん引き落としですね。
自動的に家賃が引き落とされるので、支払う側もラクですし、回収業務もラクです。
しかし、その自動引き落としタイプでも、家賃の未回収が発生することがあります。
そうです。
口座の残高が足りない場合です。
比較的、安い家賃の物件、例えば月額5万円以下の家賃の物件でも、口座残高不足で家賃が回収できないことがあります。
つまり、口座には5万円も入っていないわけですね。
そんな人たちに、管理会社の人間は督促の連絡をします。
裕福な人にはわからないかも知れませんが、口座に数万円しか入っていない人は実際には世の中にたくさんいます。
いわゆる貧困層ですね。
貧困になる原因は様々で、本人に責任があるケースもあれば、災害や犯罪被害や病気などの不可抗力による不幸なケースもあります。
だから、家賃が未払いになったからと言って、いきなりその人が悪だとは断言できないんですよね。
追い出し
ただし、部屋を借りながら家賃を払わないのは、モノを買っておカネを払わないのと理屈は同じです。
どんな理由であっても、払わないことを認めることはできません。
当初は督促をし、たいていはそれで問題は解消していきます。
しかし、ホントの貧困層は、未払いが2ヶ月、3ヶ月と積み重なります。
そんな相手にボクたちは結論を迫られます。
そうです。
追い出しです。
もちろん、手を引っ張って引きずり出したり、鍵を交換して部屋に入れなくして強引に追い出すような手法は法的にも禁止されていますし、そんなことは、感情的にもボクにはできません。
以前、家賃が半年も未回収の入居者がいました。
開発途上国から来ている外国人で、部屋の契約名義人は男性で日本語はまったく理解できません。妻は片言の日本語です。
このようなケースはとても難しいです。
本人には何を言っても通じないので妻に話すんですが、日本と外国の文化の違いもあり、家賃がたまることの危機感が感じられません。
1ヶ月の家賃が5万円として半年分なら30万円。
しかも、話を聞いたところ、夫は警察につかまり、最近になって出所して仕事を探しているとのこと。
ボクが部屋に行くと、小さな子供が3人おり、しかも妻は身重。もうすぐ4人目が生まれそうです。
国から児童手当をもらっているそうなんですが、そんなのはせいぜい数万円程度。
ボクの目から見れば、完全な緊急事態です。
でも、これ以上、家賃の支払い無しで引き続き同じ部屋に住むと、家賃の未払いはさらに増えます。
つまり、借金が増えるんですね。
管理会社にとって、お客さんは大きく2種類。
- 大家さん
- 入居者
本来はどちらも大切にすべき相手です。
でも、家賃を払っていない入居者は対価を払っていないので、実質的にはお客さんとは呼べない立場なんですよね。
おカネを払わない入居者のために大家さんに損害が発生するのは、管理会社としては避けるべき仕事です。
で、ボクもやむを得ず、これ以上は入居を続けられないので、解約の話をするわけです。
つまり、出て行ってくださいってことですね。
世の中にはホントにあくどいやり方で追い出して逮捕された管理会社も存在しますが、ボクはそんなやり方はしません。
それでも、出て行ってもらうこと自体は、ボクの仕事なんですよね。
一番いいのは、親族の家に移り住むことですが、それもカンタンではありません。何せ夫婦と子供が4人になるわけですから。
なので、生活保護を申請するようにススメつつ、強制執行などの法的手続きを執るのみです。
あくまでも合法的に。
でも、合法的だからと言って、やっぱり小さな子供を見ると、こっちもツラいですよ。
その子たちには罪は無いわけで。
たまたま裕福な家庭に生まれれば、何の不自由も無く子供は育つ。
たまたま貧しい家庭に生まれれば、子供がひもじい思いをする。
努力の結果、格差が生まれるのはボクも理解しますが、たまたま生まれによって格差が生じるのはボクは納得がいかないんですよね。
親の責任は追及しつつ、生活保護などの制度を紹介することで、少なくとも子供たちはきちんと成長できるようにする。
そんな手伝いをする管理会社の人間がいてもいいですよね。