義務教育に金融は取り込むべき
これまでにもたびたび書いてきました、サルにもわかるファイナンスのおはなし。
今回も、
「そんなことわかりきってるよ!」
とツッコまれそうな話で、でも意外と知らない人も多い基本的な話を書いてみましょう。
まずは、収入ということは。
テレビでは実業家の収入を表すのに年商という言葉をよく使います。
例えば年商10億円のリッチな青年実業家、なんていうと、いかにも金持ちなのかなー、という印象を与えがちです。
しかし、そうではありません。
まず、勘違いをしやすいのがサラリーマンやアルバイトなど、いわゆる給与労働者と呼ばれる人たち。
給与労働者というのは、税金や社会保険料以外は、もらった給料はほとんどそのまま手取りになります。
例えば、月給30万円だとして、そこから税金や社会保険料として8万円引かれたら、残りの22万円ほどが給与口座に振り込まれます。
これが手取りです。
しかし、実業家と呼ばれる経営者の年商については違います。
例えば、とある実業家が1万円の商品を年間10万個販売したら、
1万円×10万個=10億円
つまり年商は10億円となります。
この人はリッチでしょうか?
もし、この商品の仕入れ価格が1個1万円ならどうですか?
1万円×10万個=10億円
つまり、この人は10億円を仕入れ先に支払う必要があります。
売上として10億円を手に入れつつ、仕入れ代金として10億円として支払う。つまり差し引きゼロです。
この人は10万個もの商品を売るという手間をかけながら1円も儲けることができませんでした。
これでは時間の無駄ですし生きてはいけませんし、リッチでもなんでもありません。
しかも売上の10億円の売上金が手元に入ってくるのはあくまでも売れてからですが、仕入先に支払う期限は、一般的には先にやってきます。
まだ手元に10億円もないのに10億円を支払う必要があります。
多くの企業が資金繰りに奔走する必要があるのは、まさにこの売上と支払のタイミングのずれのためです。
もちろん支払えなければ倒産です。
上記の例では仕入れも販売も同じ1万円で同じ価格という極端な例で説明しましたが、単に収入や年商がその人の儲けや利益では無いということに注意する必要があります。
サラリーマンなどの給与労働者は出張費や電話代、事務所の家賃、名刺作成費用など、すべて会社が払ってくれます。給与から引かれることはありません。
ですので、勘違いが起こりやすいです。
しかし、世の中の実業家は常にそういう苦労と戦っています。
例えば華やかそうなプロゴルファーにしても、それなりの賞金を得たところで、ツアーに参加するための参加費や旅費、道具代、キャディさんを雇う費用も自分で支払う必要があります。
ボクが昔働いていた生命保険コンサルティングもそうでした。
報酬はそれなりに得られても、交通費や電話代など、すべて自分持ちでした。業務に使うパソコンにも使用料を支払う必要がありました。
もう一つ言うと、給与労働者は一般的には毎月の収入が保証されています。
今月の給料が30万円なら来月も再来月も30万円です。
でも実業家やプロゴルファーや保険の外交員は違います。
今月50万円の収入を得たとしても、来月はゼロかもしれません。すると2ヶ月の平均収入は月額25万円です。
しかも経費は出ていってしまいます。
そういうリスクを実業家は抱えています。
ですから給与労働者よりも高い収入を得たとしても、それは翌月以降のリスクに対するバッファも含まれているわけです。
ボクは以前から言っていますが、サラリーマンや公務員は、この世の中で一番楽な仕事です。
リスクは会社が負担してくれる、経費も会社が負担してくれる。
しかもその比率は大企業であればあるほど大きくなります。
つまり大企業に勤める人ほど、能力は低くて良いわけです。
大企業で出世して役職について誇りに思っている人は多いと思いますが、とんだ井の中の蛙です。
不景気の昨今、学生の就職先人気はますます公務員と大企業に集中します。
つまり能力の低い現場が人気を集めるわけです。
従来の発展途上国が力を付けつつある、つまり能力を高めて競争に勝ち抜こうとするなかで、こんな日本が将来安泰なはずも無いことは以前書いたとおりです。
沈む国
次回は資産の話を書きます。