エリアの面積はほぼ同じなのに加入者数は大きく違う
SoftBankは電波が悪い。
この苦情はあちこちで聞かれます。
では、この電波が悪いというのは相対評価なのか絶対評価なのか?
相対評価と絶対評価の違いに着いては、こちらの記事を読んでください。
相対評価と絶対評価と血液型占いと法律(悪い国にしないための論理的思考シリーズ)
さて、相対評価だとすれば、比較対象の相手が必要になります。それはもちろんdocomoやauですね。
これは判断は簡単でしょう。
SoftBankの電波はdocomoやauと比べると、「相対的に」悪い。
では絶対評価ではどうでしょうか?
つまり、docomoやauとの比較は関係なしに、SoftBankの電波は絶対的に悪いのでしょうか?
ボクが日常使っている限りでは普通に通信も通話も心地良く出来ていますので、ボク自身は絶対的には悪いとは感じていません。
つまりボクの評価は、相対的には悪く、絶対的には良いですね。
でもこれはボクが都心を中心に使っているからであって、地域によっては使い物にならなくなるところもあるかも知れません。
その人にとっては絶対的にも悪いということになります。
よって、SoftBankの電波は相対的には誰が見ても悪く、絶対的には人によって評価が異なる、というところですかね。
ところで本題はそこでは無いです。
SoftBankの社長の孫さんが電波に関して、
「docomoに追いついて見せる」
と言っています。つまり、相対的な評価を良くすると言っているわけです。
もちろん仮にdocomoに追いついたとしても、docomoの電波だって地域によっては悪いところもあるわけで、そういうところまで似てしまうなら、相対的には良いかもしれないけれど、絶対的には悪いとなるわけです。
まあそれはdocomoについても言えるわけです。
これから書くことは、ボク自身が費用の絶対額を調べたわけではないので、数字の整合性は取れません。
あくまでも理論上のこととして書きます。
まず、企業経営には収入と支出が伴います。これを売上と費用と呼んだりします。
docomoの加入者数は現在約5700万人。
SoftBankの加入者数は現在約2400万人。
個々の契約プランの違いなどはありますが、細かい話は抜きにして、加入者数の差が売上高の差につながるなら、docomoはSoftBankの約2.4倍の売上高があります。
もしSoftBankに毎月収入として1億円入ってくるのなら、docomoに毎月2億4千万円入ってくるという差です。
いっぽうの費用について。
もしSoftBankの電波が改善してdocomoに追いついたとします。
すると両者とも日本全域の同じエリアを同じ質の電波でカバーするわけですから、その維持運営にかかるコストはどちらもほとんど同じになるはずです。
他にもいろんな収支があるでしょうが、ここでは話を簡単にするために無視するとして、売上高は2.4倍なのに費用は同じ。
となると、利益率は格段に差が付くばかりか、もしかしたらSoftBankは赤字になるかも知れません。
さっき書いたようにSoftBankの月収が1億円、docomoの月収が2億4千万円として、電波基地局の運営維持費が毎月1億5千万円かかっったらどうですか?
docomoは毎月9千万円の利益が出ますが、SoftBankは毎月5千万円の赤字です。
この例は、あくまでも例に過ぎませんが、常識的に考えて、売上高が2倍以上の差がある企業同士が同じ運営コストを負担して果たして両者ともが健全に経営を維持できるでしょうか。
この問題をクリアするにはSoftBankは加入者数もdocomo並みに増やす必要がありますが、現在の増加ペースでは、あと数十年かかるでしょう。
つまり、SoftBankがdocomo並みに電波を改善することは、ある程度の加入者獲得の動機にはなるかもしれませんが、総じてSoftBankの企業体力を奪い去る以外の何者でもないわけです。
SoftBankの企業体力が奪い去られると、現在、他社に対して低く設定している料金についても余力が無くなってきます。かと言って値上げをすれば他社に流出するきかっけにもなりますから悪循環としか言いようがありません。
ユーザーは企業経営が傾くよりも、できるだけ同じキャリアで長く続けて欲しいと思っています。
過去にJフォンやヴォーダフォン、SoftBankとメールアドレスがコロコロ変わった経緯がありますが、決して良くないことです。
現在のSoftBankには定額通信料が他社よりも安いというメリットがあります。
このことはユーザーにキャリアを選択させるという余地を残していると思います。
現在
docomo:料金は高い、電波は良い
SoftBank:料金は安い、電波は悪い
なので、電波に重きを置きたいユーザーはdocomoを選べますし、安い料金を望むユーザーはSoftBankを選べます。
しかし、SoftBankの電波が改善して、
docomo:料金は高い、電波は良い
SoftBank:料金は高い、電波は良い
となると、ユーザーは電波品質や料金面での選択肢は奪われることになります。
もちろん機種やサービスで差別化はできるでしょうが、現在よりも選択肢の範囲は狭まることには違い有りません。
そんなふうに考えると、SoftBankがdocomo並みに電波を改善することはデメリットも存在しつつ、現実的に難しい気がしています。
あくまでも財務諸表の損益計算書を見ないで書いた話ですので、数字の例えは外しているでしょうけど、理論的にはそういうことになるのではないでしょうか。