長寿のための保険
かつて保険業界に身を置いたので、たまに保険関係の記事も書いているB-CHANです。
今回はトンチン保険。
ウソみたいな名前ですが、一応、専門用語です。
人名から採った名前のようです。
多くの人は、保険と言えば、生命保険か医療保険のコトだと思っていますよね。
例えば、人が亡くなったら数百万円、数千万円もらえる保険。
それが生命保険とか死亡保険とか言われます。
また、入院したら、入院1日につき5000円とか1万円とかもらえる保険。
それが医療保険です。
要するに、日常の生活を破壊するコト(死亡や病気)が起こったら適用される保険ですね。
しかし、保険業界には、もうひとつ、大きな商品があります。
それが年金保険です。
例えば、あなたが50歳で、毎月コツコツと掛け金(保険料と言います)を掛け続け、70歳になったら、毎月、保険会社から年金が支払われる。
そんなイメージです。
重要なのは、70歳になって生きていたら、年金がもらえる点です。
それまでに亡くなった場合も、積み立てたおカネは返してもらえるんですが、それは本来の目的ではありません。
あくまでも老後に生活費が必要だからコツコツと積み立てておくんですね。
ぶっちゃけ、銀行に毎月コツコツと貯金するのと、そんなに変わりません。
最近、そんな保険業界の年金商品に登場したのがトンチン方式の保険。
と言うのは、日本人の寿命があまりにも伸び、しかも国の年金制度に不安があるため、自分で老後資金を用意するニーズが非常に高まったからです。
トンチン保険とは
ボクがこのブログで従来から書いているように、保険は必要に応じて加入すればいいんです。
例えば、独身で子供がいない人は、生命保険はほぼ必要ありません。
なぜなら自分に万が一のことがあっても、誰も生活に困らないからです。
同じ意味で、子供がいてもすでに子供が成人していて自分で収入を得ているのなら、やはり生命保険は不要です。
では、トンチン保険はどんな人に必要なのか。
それは長生きする人です。
トンチン保険の仕組みはカンタン。
さっきの年金保険と同じです。
例えば、あなたが50歳で、毎月コツコツと保険料を掛け続け、70歳になったら、毎月、保険会社から年金が支払われる。
ここまでは普通の年金保険と同じ。
ポイントは、それまでに亡くなった場合です。
早期に亡くなった場合は、それまでに払い込んだ額よりも少ない額しか払い戻されません。
つまり損します。
その代わり、70歳まで生きていた場合に支払われる年金は高額になります。
この商品は、あくまでも長生きに主眼を置いています。
早期に亡くなった場合は損する代わりに、長生きの場合には通常の商品よりも、もらえる額が大きい。
そうやって、つじつまを合わせているわけです。
死者が損をして生きた人がトクをする。
その面だけを見て、ヘンな批判をする人もいるようですが。
でも、世界一の高齢化社会である日本では、理にかなった商品なんですよね。
なにせ日本では、高齢者になる前に亡くなる確率よりも、高齢者になるまで生きる確率の方がずっと高いわけですから。
ほとんどの人が老後の生活資金を何とか確保する必要があるわけです。
それを、亡くなった人から補填してもらえるのがトンチン保険。
ただし、リスクもあります。
それは固定金利であること。つまり、70歳でもらえる額は決まっています。
例えば、50歳から70歳の間に世の中の景気が良くなって金利が上がれば、銀行預金や株式投資の方が儲かるかもしれません。
しかし、この商品は固定金利かつ中途解約ができないので、世の中の景気の変動に対応できません。
なにせ20年もあれば、世の中がどう変化するかなんて、誰も予測できないですからね。
そこが最大のリスク。
とは言え、日本は世界でも有数の保険大国。
とにかく多くの世帯が何らかの保険に加入しています。
しかも、どんな保険に加入しているのかもよく理解しないままに。
1世帯の平均的な保険料額は5万円とも言われています。
つまり、毎月、5万円のローンを組んでいるのと同じ。
それを良くわからない商品に払い続けて、損をしている人もたくさんいるわけです。
「いやあ、親戚や友人から保険をススメられたので、言われるままに加入した。」
なんて人が非常に多いんですね。
ぶっちゃけ、人は亡くなってしまえば、もうおカネは不要です。
墓も気持ちの問題。ボクだって自分の墓なんて不要ですし。
むしろ、生きているからこそ、おカネが必要になります。
ならば、わけのわからない不要な生命保険に加入するよりも、長生きの生活費を担保できるトンチン保険を選ぶ方がメリットが大きいのでは無いかと。
もちろん、さっき書いたリスクを十分に理解した上でですけどね。
ちなみに、国の年金制度も、思いっきりトンチン保険です。
独身で子供がいないボクも、とりあえず60歳までは年金保険料を国に納め続けることになりますが、例えば、60歳で人生が終わってしまえば、ボクは払った保険料を全く取り戻すこと無く終わりです。
つまり、ボクの払ったおカネは他の長生きの人の年金に使われるわけです。