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ドコモ、au、ソフトバンクの定額通話プランを見てわかるのは携帯電話でユーザーは大きく損をしているということ

3社横並びの理由

 

みなさん、こんにちは!

B-CHANです。

 

ついに、ドコモ、au、ソフトバンクの3社が揃って定額通話プランを出してきました。

3社とも、

  • 一般携帯電話 : 2200円/月
  • スマートフォン : 2700円/月

と横並び。

みなさん、不思議に思いませんか?

お互い、連携してるはずのない3社が、なぜまったく同じ料金なのか?

これにはミクロ経済学という学問で説明がなされるんですが、今回は一般の人にわかりやすくお話ししてみます。

 

寡占市場

 

市場にたくさんの会社があると競争が起こります。

同じ食パンをスーパーAが100円、スーパーBが98円で販売すれば、お客さんはスーパーBに流れます。

そうなるとスーパーAは困るので、スーパーAは97円に値下げします。

するとお客さんは今度はスーパーAに戻ってきます。

こうやってどんどん安くなるのが経済市場。

ただし例えば95円で仕入れたパンを94円で売ると赤字なので、そこまでの値下げはできません。

つまり、スーパーにとっては利益が出て、お客さんにとっては安い、その価格で安定します。

これが一般的な競争市場です。

もし世の中にスーパーAだけしか無かったら、パンを買うにはスーパーAに行くしかありません。

仮にスーパーAが110円という価格を付けても、パンをほしい人は他で買えないので、110円で買うしか無いわけです。

これが独占市場。

独占市場では競争市場より価格は高止まりします。

複数の企業が競争するから、物価は適正価格に向かうわけです。

 

でも世の中にスーパーAとスーパーBしか無かったら?

スーパーAとスーパーBが裏でこっそり話し合って食パンを110円にしようと手を結ぶかもしれません。

するとお客さんはスーパーAかスーパーBしか選択肢が無いので、結局、高値で食パンを買うしかありません。

こういう少数の企業しか無い市場を寡占市場と言います。

そして企業同士がこっそり価格を釣り上げる連携をすることをカルテルと言います。

独占もカルテルも、お客さんにとっては不利益ですよね。

だから、だいたい世界中の国々では独占禁止法があって、こういうことを禁止しています。

 

日本の携帯電話市場

 

日本にはドコモ、au、ソフトバンクという3つの大きな携帯電話グループしかありません。

イーモバイルもウィルコムもソフトバンクグループ、WiMAXはauのグループと呼んでいいでしょう。

ここで、3社の2013年度の業績を見てみます。

営業利益率というのは売上高のうちの営業利益の割合です。

 

ドコモ

売上高 : 4兆4612億円

営業利益 : 8192億円

営業利益率 : 18%

 

au

売上高 : 4兆3336億円

営業利益 : 6632億円

営業利益率 : 15%

 

ソフトバンク

売上高 : 6兆6666億円

営業利益 : 1兆853億円

営業利益率 : 16%

 

3社とも営業利益率は15%以上ですね。

スーパーで言えば100円の食パンを売れば15円儲かる計算です。

 

他の業界はどうでしょう。

 

トヨタ自動車

売上高 : 25兆6919億円

営業利益 : 2兆2921億円

営業利益率 : 9%

 

パナソニック

売上高 : 7兆7365億円

営業利益 : 3051億円

営業利益率 : 4%

 

ファーストリテイリング(2013年8月決算)

売上高 : 1兆1430億円

営業利益 : 1329億円

営業利益率 : 12%

 

セブン&アイ・ホールディングス(2014年2月決算)

売上高 : 5兆6318億円

営業利益 : 3397億円

営業利益率 : 6%

 

一般に経営分析をするときには異業種を単純に比べて数値の良し悪しを言っても意味がありません。

産業構造が違いますからね。

ただ、上記の比較をすると、業界の性質が見えてきます。

携帯電話業界はよく儲かりますね。

なぜ儲かるのでしょうか?

さっき書きましたね。

携帯電話市場が寡占市場だからです。

もし携帯電話会社が10社も20社もあれば、中には価格競争を仕掛けてくる会社も出てくるかもしれません。

しかし今の携帯電話市場はたったの3社。

3社でも競争は起こるんですが、あえて競争を仕掛けなくても、他社と横並びの価格を付けておけば、すごく儲かるんですよね。

事実上、カルテルと同じ状態です。

こうやって企業が努力をしなくなるのが独占市場や寡占市場の弊害です。

企業が努力をしないと、価格が高止まりしたり、技術が停滞したりします。

ユーザーにとってはデメリットばかりです。

携帯電話の料金も競争市場であればもっと安くなるんですが3社の寡占のため高止まりしています。

いや、今回の定額通話プランを見てください。

通話を毎月ある程度しない人や、LINEなどの無料通話アプリで通話する人にとってはむしろ値上げです。

要するに若い世代に対してはほとんど値上げなんです。

競争市場なら値上げをすると競争に負けるので企業はなかなか値上げできないんですが、3社の寡占市場なので3社とも堂々と値上げしてきました。

ユーザーはそれが嫌でも他に選択肢がありません。

その結果、ユーザーは不利益を被り、携帯電話会社はたっぷり儲かるという構造です。

かつて携帯電話会社に殴りこんできて価格を破壊したソフトバンク。

まさに市場への新規参入によってユーザーにメリットをもたらしたわかりやすい事例です。

実際に多くのユーザーが流れました。

しかし今はもうソフトバンクも営業利益では1位。

価格破壊を仕掛ける意義が失われました。

今後も3社による業界構造が続く限り、3社は大きく儲かり、その原資をユーザーが支払うという形は続きます。

携帯電話会社の電波利用料を引き上げろという話も出ますが、結局その分、料金に上乗せされるので、不利益を被るのはユーザーです。

もし携帯電話会社がもっとたくさん出現すれば、3社も努力を迫られるようになるんですが、業界に参入するには巨大な資本が必要になるので難しいんですよね。

これを参入障壁が高いと言います。

消費者が不利益を被るのを避けるために独占禁止法があるんですが、参入障壁の高さは独占禁止法では何ともしがたいです。

不健全な競争は、国家としては決して良くない状態なので、携帯電話会社の新規参入がしやすくなる仕組みづくりが必要でしょうね。

以上、各社横並びの定額通話プランを見て思いました。

ユーザーが合意して契約している以上、ユーザーが損をしているというのは間違いだという指摘もあるでしょうが、それはあくまでも(完全)競争市場での話なので、今回はあえてこういう話を書いてみました。

 

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