家賃返金
不動産業界にいるボクにとって、今回の台風災害で興味深いニュースがありました。
読んで理解できるでしょうか。
カンタンに説明します。
まず、マンションの各部屋は個別に販売されています。
1室1室が別々の所有者(オーナー)なんですね。そして、それぞれの部屋に住む、と。
しかし、中には、買った部屋を誰かに貸す人もいます。
その場合、オーナーが自分で部屋の借り手を探したり、入退去時の清掃や修繕をするのは大変なので、管理会社に任せるコトが多いです。
管理会社が入居者を探し、毎月の家賃を入居者から徴収し、その一部を手数料として引いて、残りをオーナーの銀行口座へ送金するわけです。
こうやってオーナーは家賃収入を得ます。
被災時の負担
今回の台風での被災によって、そのマンションの部屋が使えなくなりました。
つまり、入居者がそこに住めなくなったわけです。
住めないのだから、入居者は家賃を払う必要は無い。
なので、管理会社は、入居者から徴収した家賃を、オーナーに送金せずに、入居者に返金します。
その報告を、管理会社からオーナーに行ったわけですね。
すると、オーナーにとっては、被災はオーナーの責任では無いのに、なぜ家賃を得られないのか、と管理会社に怒っているわけです。
ここでもう一度、冒頭の記事を読めば理解できると思います。
で、ここからが本題。
被害を受けると誰かのせいにしたくなる気持ちはわかりますが、被災は、台風のせいです。
管理会社のせいでも入居者のせいでもありません。
だからと言って台風を責めるわけにもいかないので、誰かが責任を負うわけですが、この場合は、所有者に責任があります。
例えば、クルマを買って、近所のディーラーに車検をしてもらっていたとしても、台風でクルマが水没してしまえば、それはもう所有者が損を負うしか無いのです。
被災に関してディーラーに罪はありません。
モノを所有した以上、それが被災で損壊する可能性は誰にでもあります。
損壊を経験したくなければ、モノを所有しないと言う選択をするしかありません。
マンションも同じ。
マンションの設備が水没した以上、台風で水没するようなモノを買った人の責任です。
他人に責任を押しつけるコトはできません。
通常、管理会社の業務は日常管理とメンテナンスです。
管理契約の中に、
「浸水による設備損傷の責任は管理会社が負う」
と文があれば管理会社の責任ですが、そんな文がある契約はまず無いでしょう。
もし入れれば、責任が重すぎて、どの管理会社も管理を受託してくれなくなるか、もしくは、非常に高額な管理手数料になるでしょう。
モノを所有する以上、その責任は所有者にあります。
あなたが、四角い箱を庭に置きっぱなしにして、その箱が台風の風で飛んで行って誰かにケガをさせたのなら、それは所有者であるあなたの責任です。
所有者責任は実は重いのです。
今回のマンションのオーナーは気の毒だと思いますが、二度とこのような事態を起こしたくないのであれば、きちんと浸水対策をしておくコトです。
もちろんその費用もオーナー負担です。
今回は、マンションを人に貸すと言う話でしたが、自宅でも同じ。自宅を購入するか賃貸で過ごすかと言う議論がありますが、購入した場合、今回のように、所有者としての責任が発生するコトを知っておいてください。
ボクは賃貸にしか住まないコトにしているので、当然、自宅に何か不具合があったら、オーナーの負担で修理してもらっていますし、それが原因で部屋を使えないようなコトがあれば、その期間の家賃は免除してもらいます。
例えば、台風でボクの部屋の窓ガラスが割れたら、それを修理する義務はオーナーにあります。
建物賃貸借契約はオーナーが入居者に部屋を使わせる代わりに家賃を得る契約なので、オーナーには、入居者が部屋を使える状態にする義務があるのです。
義務を果たさないのなら対価である家賃を払わないのもやむを得ません。