鍵の問題
毎年、1月から3月は賃貸住宅の契約の繁忙期です。
大学に入学する人や新社会人が新居に引っ越すからです。
ボクのように不動産業に携わり、しかも自身が何度も引っ越しを経験していればわかるんですが、一般の人にはあまり知られていない鍵の話をしてみます。
賃貸住宅は自己保有の住宅と違って、住人が何度も入れ替わります。
つまり、建築されて最初に住む人以外は中古の建物に住むわけです。
今これを読んでいるあなたがもし賃貸住宅に住んでいるのなら、その部屋には以前、別の人が住んでいた可能性が高いですね。
ここで問題になるのが鍵です。
あなたが住む部屋の鍵。
前の住人が同じ鍵を持っていて、入ってくることは無いのでしょうか?
それは基本的には心配ありません。
なぜなら、入居直前に鍵は交換されるからです。
ただし、ここからが注意。
鍵交換とローテーション
鍵を交換するのには2種類の意味があります。
交換するのは、ドアに付いている丸いシリンダーと呼ばれる部品です。
上記の製品はU9と呼ばれる一番一般的なギザギザのキーです。
で、丸いのがシリンダー。
キーとシリンダーはセットになっているので、シリンダーを交換してしまえば、以前のキーは差し込めません。
賃貸住宅の契約をする際によく確認して欲しいんですが、
- 鍵交換
- ローテーション
のどちらであるか、と言うことです。
鍵交換なら、完全に新品のシリンダーに交換されるので、あなたには新品のキーが渡されます。つまり、その部屋のキーを持っているのはあなた(と管理会社)のみです。
問題はローテーション。
ローテーションとはその名の通り、鍵を使い回すと言う意味です。
例えば、今回住む部屋が205号室だとします。
そのドアに、以前の801号室に付いていたシリンダーを取り付けるのです。
この場合、考えられるのは、以前、801号室に住んでいた住人が、そのキーのコピー(スペアキー)を持っているケースです。
通常は退去する際に、すべてのキーを管理会社に返却するんですが、スペアキーなんてホームセンターなどで数百円で簡単に作成できてしまいます。
なので、管理会社も住人がスペアキーを作ったかどうかなんて把握しきれません。
スペアキーを作っても住人が管理会社に正直に言わなければ、お手上げです。
そうすると、以前の801号室のシリンダーが、今回、205号室に付いた場合、以前の801号室の住人がスペアキーを使って205号室に入ることができてしまうんですよね。
もちろん、以前の801号室の住人が、今回、そのシリンダーが205号室に付いたなんてことは知らないので、その確率は限りなくゼロに近いんですが、まったくゼロとは言えませんね。
以前の801号室の住人が悪い人で、このマンションに戻ってきて、一部屋一部屋を順番に鍵を開けようとした場合、205号室は開けられてしまいます。
これがローテーションの問題点。
だから、ホントはローテーションなんてやめて、すべて新品への鍵交換をすれば良いんです。
でも、高いんですよね。
新品への鍵交換は2万円から3万円程度かかります。
新品のキーとシリンダーの購入代金と鍵交換の手間賃です。
新入生や新社会人はおカネを持っていませんし、たかだか6万円程度の家賃の部屋に住むのに鍵交換だけで3万円もとられるのは痛いですよね。
だから、鍵交換では無くローテーションを選ぶ人も多いんです。
ちなみに上記のU9キーでは無く、最近はこのようなディンプルキーも増えてきました。
ディンプルキーは、キーの形状がギザギザではなく、代わりに表面にいくつかの穴が開いているか溝が掘られています。
ディンプルキーはセキュリティ上は非常に安全で、スペアキーを作るにも数千円かかり、しかも住所氏名などの申請が必要です。だから簡単に複製して犯罪に使いにくいんですよね。
とは言え、ディンプルキーでも、ローテーションなら、やはり以前の別の部屋の住民がスペアキーを持っている可能性があるわけです。
もしあなたがこれから賃貸住宅の契約をしようと思っているなら、鍵のことは注意してください。
できれば、ローテーションでは無く、鍵交換することをオススメします。
なお、ローテーションの場合でも、同じマンション内では無く、異なるマンション同士でローテーションすれば、もっと安全だし安上がりなのでは?と思ったあなた。
鋭いです!
確かに正しい意見です。
ただ、残念ながら、賃貸住宅はたいてい、建物ごとに所有者が異なります。
Aマンションの大家さんとBマンションの大家さんは別人です。
だから、当然、それぞれの財産は分別管理しなければなりません。
AマンションとBマンションのシリンダーをごちゃ混ぜにするような管理は、まずありえません。
残念ながらと書いてしまいましたが、きちんとそうしている管理会社は健全ですし、当然のことです。