実力による優勝と制度による優勝
こんにちは、B-CHANです。
クイズ番組で、1問正解するたびに10点、全10問で優勝を決めるとします。
しかし、最後の1問だけは、なんと1000点もらえます。
そんなクイズ番組、結局、最後の1問を正解をしたかどうかで優勝が決まるんですよね。
まあ変なルールです。
そのヘンテコルールを、とあるプロスポーツ界で適用しているんです。
もう10年間も。
何のスポーツ界だか、わかりますか?
そうです。
日本のプロ野球です。
クライマックスシリーズです。
たいていのプロスポーツでは最後に優勝チームを決めます。
その優勝の意味合いと言うのは、ほぼ例外なく、
その年に一番強いチーム
であると言うことです。
さっきのクイズ番組の話をもう一度します。
例えば、Aと言うチームが1問目から9問目まで全問正解していて90点。
しかし最後の問題でBと言うチームが正解すると、Bチームが優勝です。
Aチーム = 9問正解
Bチーム = 1問正解
実力的にはAチームが上なんですが、制度の欠陥によって、実力が下のチームが優勝してしまうわけです。
つまり、制度に欠陥があると、優勝者と実力とが合わなくなるケースがあるんです。
プロ野球における優勝とは、その年に一番強いチームであるはずが、クライマックスシリーズと言う欠陥制度のおかげで、必ずしもその年に一番強いチームが日本一とは限らない事態が起きています。
さっきのBチームが日本一になってしまうんですね。
ここでボクがクライマックスシリーズが欠陥だと言っているのは、あくまでもそんな意味合いです。
別の意味合いで見れば、クライマックスシリーズは優れたシステムです。
その別の意味合いとは、チームの収益と言う意味です。
クライマックスシリーズが無いと、シーズンの後半に1位チームと2位チームのゲーム差が離れていれば、2位以下のチームは消化試合になります。
今年のセ・リーグがそうでした。1位の広島カープが2位以下を引き離しましたから。
この場合、観客動員数は苦戦します。
しかし、クライマックスシリーズのおかげで3位までは希望があり、お客さんも足を運びます。
つまり、ある面で見れば、クライマックスシリーズは非常にダメな制度であり、別の面で見れば、非常に有益な制度なんです。
問題は、どちらに重点を置くかなんです。
- 強いチームを優勝させる意味合い
- チームが儲ける意味合い
ちなみに、クライマックスシリーズが無くても、両方を満たす方法があります。
それが、
戦力均衡
です。
戦力均衡
各チームのチカラが均衡していれば、シーズンの最後までゲーム差が離れずに接戦になるので、消化試合が減ります。よってお客さんが増えます。
しかも、接戦とは言え、ちゃんと強いチームが最後には優勝するようになります。
ドラフト制度と言うのは、戦力均衡化のために存在します。
プロ野球は一時期、逆指名のような歪んだ制度が採用されました。
それによって強いチームがますます強くなり、消化試合が増え、経営にダメージを与え、仕方なく、クライマックスシリーズのような制度を取り入れざるを得なくなるような事態になるわけです。
プロ野球は複数チームでの競合です。
特定チームだけ経営が成り立ってもダメなんです。
人気がある読売ジャイアンツや阪神タイガースさえ経営が成り立てば良いと言うわけではありません。
じゃあ他のチームがみんな倒産して、1年中ずっとジャイアンツ対タイガース戦しか無い状態になれば、いずれその人気も無くなるでしょう。
そうならないように、アメリカのメジャーリーグはリーグ全体で大きな収益を上げ、リーグ全体を活性化させています。
そのおかげで、他の産業がメジャーリーグにすり寄ってきます。そこに大きなビジネスチャンスがあるからです。
日本のプロ野球の場合、一部のチームは黒字ですが、12球団全体で見れば、赤字のチームも多いです。つまり、プロ野球全体として考えれば、日本ではそんなに儲からない、つまりお客さんがそんなにおカネを使わないスポーツなんです。
それでも親会社がおカネを出すのは、企業名がマスコミに出ることで宣伝になるからです。
- メジャーリーグ = 野球そのものが収益を稼ぐので、企業がそれに乗るメリットがある。
- プロ野球 = 野球そのものは赤字体質だが、宣伝になるので企業はカネを出す。
日本で一番人気のあるプロスポーツである野球ですら、マーケット全体では赤字体質なんですよね。
その赤字を縮小すると言う「経営」のための制度がクライマックスシリーズであり、決してクライマックスシリーズは、スポーツの実力を純粋に評価するための制度では無いのです。
だから、ペナントレースで3位までのチームがクライマックスシリーズに出られるわけです。
3位まで出られるルールにしておけば、経営的には「おいしい」からです。
今年の横浜DeNAベイスターズはペナントレースでは69勝71敗と言う借金チームです。
半分も勝てない弱いチームなんです。
それでも日本シリーズに出るチャンスが生まれてしまっています。
まさに、最後の1問だけ1000点のクイズ番組と同じです。
弱いけど、制度上は日本一になる可能性があります。
つまり、プロ野球における日本一の意味合いが「強さ」では無くなっているわけです。
クイズの最後の1問にたまたま正解したかどうかが重要になってしまってます。
当たり前ですが、こんなおかしな制度は世界中のプロスポーツの中でも日本のプロ野球だけです。
それでも、
「ルールに従っているんだからいいじゃないか。」
と言う人は必ずいます。
その通りなんです。ルールに従っている以上、出場チームに罪はありません。
しかし、ルールそのものがおかしければ、やはり見直す必要はあるでしょう。
法律がある以上、法律を守る必要はありますが、一方で、法律そのものが間違っていることも珍しくないです。
変な話ですが、将来、クライマックスシリーズのルールが変更されて、1位から6位までが日本シリーズに出られるチャンスが生まれるとしましょう。
そのときも、
「ルールに従っているんだからいいじゃないか。」
と言えるでしょうか。
言えないですよね。ルール自体がおかしいと言う目線と思考力を失ってはいけません。
ボクはこのブログで
- 相対的
- 絶対的
と言う用語の説明を何度もしてきました。
いまのプロ野球の制度は相対的な目線だけです。
絶対的な目線が抜け落ちているんです。
つまり、強くても順位が低ければ評価されないし、逆に弱くても順位が高ければ評価されてしまうんです。
最近で言えば2010年のセ・リーグ。東京ヤクルトスワローズは72勝68敗で2016年のベイスターズより好成績ですが、4位なのでクライマックスシリーズには出場できませんでした。
つまり絶対的強さは考慮されず相対的強さだけで決まるからです。
ボクは、一番理想なのは戦力均衡化だと思っていて、それによって消化試合が無くなり、各チームの経営状態が良くなり、しかもクライマックスシリーズのような矛盾も解消できます。
だから、ドラフトの制度改革はどんどん推し進めてほしいですね。
それでもどうしてもクライマックスシリーズがやめられないなら、せめて相対評価だけでは無く絶対評価も併用してほしいです。
つまり、いくら順位が上でも弱いチームは出られないようにするルールを作るべきです。
いくらなんでも借金チームが日本シリーズに出るなんて、ひどすぎですから。
2007年のクライマックスシリーズ開始以来、毎年、ボクは、ペナントレース優勝チームが日本シリーズに出られることが決まるとホッとしてきました。
それくらい、クライマックスシリーズに違和感を感じています。
と言うわけで、今年の日本シリーズも北海道日本ハムファイターズと広島東洋カープの対戦が見られるように祈っています。
今回の記事では、たまたまベイスターズが対象になってしまいました。
ボクも横浜市民なのでベイスターズの日本シリーズも見てみたいですが、
- 制度のおかげで日本シリーズに出られた弱いベイスターズ
- 実力で日本シリーズに出られた強いベイスターズ
前者だと未来永劫、お笑い種です。後者であるべきでしょう。
よって今年のクライマックスシリーズのベイスターズは当然、応援してませんし、パ・リーグ3位の千葉ロッテマリーンズもクライマックスシリーズで負けて良かったと思っています。
こう言う記事を書くと、クライマックスシリーズのメリットを書く人も出てくるんです。
例えば、短期決戦での強さを見るためだ、とか。
でも、それらはあくまでもクライマックスシリーズを何とか正当化するための「後付け」の理由です。最初からそうだったわけではありません。
クライマックスシリーズができたのはあくまでも経営が苦しかった球団が少しでも多く収益を得るためです。
そのため、クライマックスシリーズシリーズが始まる数年前から、パ・リーグではプレイオフが導入されているんです。